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栗原 俊之 先生①(スポーツ健康科学部)

 

スポーツ健康科学部で学ぶ学生のために

概して,多くの書物とは一期一会の付き合いである。しかし,長い人生の中で,折に触れ,再読したくなる本,何度も繰り返し読んで,そのたびにあらためて感動してしまう本,というのも少なからず存在する。当然のことながら個々人でそれは異なり,そうした書物に出会うのは一種の「宝探し(あるいは自分探し)」であろう。推薦図書を掲げる教養人も多いが,実際のところ,(それを言い出したらこれを書いている私にとって元も子もないのだが)他人に薦められた本というものは,自分にとってそれほどではないことの方が多い。今回は,私がこれまでの人生の中で少なくとも2回以上読んだことのある書物の中から抜粋して紹介するが,学生・院生の諸君は,これからの人生で読書経験を積みながら,自分にとっての最良の書物をぜひとも探し当ててほしい。


テーマ:教養を深めたい君へ・これまでに私が読んできた本の中から

『理科系の作文技術』中公新書 ; 624
木下是雄著(中央公論社、2002年)

名著である。私も大学院生時代に読み,目から鱗が落ちた気がした思い出がある。今でも手放せない一冊である。学生に貸すたびに紛失するので,トータルで3冊以上購入している。理科系に進学した学生・院生は必ず一度は手にした方がよい。文社系の学生であっても,一読の価値はある。レポートの書き方はものすごく参考になるし,これから卒論を書こうという学生は,先行研究の確認も大事だが,真っ先に本書を読むことをお薦めする。

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『もう悩まない!論文が書ける統計』
清水信博著(オーエムエス出版、2004年)

文理系を問わず,研究を進めていくうえで最も悩ましいのは統計処理であろう。論文を書くときには必要不可欠なものだが,系統立てて教わったことも無ければ数学が苦手なので統計関連の本を読んでもよくわからないという人も多い。そんな人のための一冊。この本の優れている点は,統計処理についての英文の表記例がたくさん記載されていること。英語で論文を書く人には必需品だ。

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『教養としての身体運動・健康科学』
東京大学身体運動科学研究室編(東京大学出版会、2009年)

スポーツ健康科学のオールジャンルに役立つ本を1冊選ぶとしたら,これ。東京大学教養学部では教科書として指定されているが,最近は書店でも手に入る。全部熟読したら,あなたもスポーツ健康科学のエキスパートになれる。

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『使える筋肉 使えない筋肉』
谷本道哉著(ベースボール・マガジン社、2008年)

世の中に数多あるトレーニング教本の中でも異彩を放つ一冊。著者は私の大学院の先輩でもある。もし,トレーニング科学を学びたいのであれば,一度は熟読してほしい。常日頃から筋肉トレーニングを行っているアスリートにも必携の本だと思う。私が現役選手としてプレイしていた頃にこの本を読みたかった。

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『親指はなぜ太いのか : 直立二足歩行の起原に迫る』中公新書 ; 1709
島泰三著(中央公論新社、2003年)

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『ゾウの時間ネズミの時間 : サイズの生物学』中公新書 ; 1087
本川達雄著(中央公論社、1992年)

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『骨と骨組みのはなし』岩波ジュニア新書 ; 374
神谷敏郎著(岩波書店、2001年)

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私は人間を対象として研究している。しかし,えてして研究は行き詰ることが多く,そんなときには少し違う角度から考えることも必要だ。比較動物学では,人間そのものではなく動物を研究し,そこから,なぜ人間が他の動物と異なった進化を遂げたのかを考える。人間は二足歩行する,脳が大きい,火を使用する,道具を使用する,言語を使用する,社会的動物である,などなど多くの説が唱えられているが,真実のところはまだわからない。


『逆説の日本史』
井沢元彦著 (小学館、1993年)

私は根っからの理系人間である。当然のことながら歴史については素人である。このシリーズの著者である井沢元彦氏も本書の中で,歴史学の素人であると自白している。内容もさることながら,この事実から,井沢氏のこのシリーズをトンデモ本と酷評する輩は多い。しかし,実は研究者にとってもっとも困る質問は,素朴な疑問(いわゆる素人質問)なのである。歴史の素人ならではの切り口である"言霊,呪術的側面"から日本の歴史を紐解くという彼の発想は面白く,巧妙な語り口についつい引き込まれてしまう。

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『敗因の研究 : 決定版』日経ビジネス人文庫 ; 104
日本経済新聞運動部編(日本経済新聞社、2002年)

スポーツの世界における勝者は名声を手にする。勝者を称え,いかにして勝利をつかんだのか,というサクセスストーリーは,いつの時代でも人に夢を与える。しかし,勝者の陰には数多くの敗者が存在するものである。では,敗者は愚者か?スポーツ記者が取材した敗者たちへのインタビューをまとめたのが本書である。読み物としても面白いが,読み終わるころには,いろいろと考えさせてくれる一冊でもある。

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『41の原因から未来の失敗を予測する 』失敗百選
中尾政之著(森北出版、2005年)

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『失敗の本質 : 日本軍の組織論的研究』中公文庫 ; と18-1
戸部良一 [ほか] 著(中央公論社、1991年)

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世の中には失敗学という学問分野がある。失敗学では,起こってしまった事故に対し,責任追及よりも原因究明に着目する。人間は誰でも失敗をする。その失敗の内容を咀嚼すると実はみな同じような要因である。つまり,「人間は誰でも同じような失敗をする」。それが"大失敗"に繋がらないようにするためにはどうすべきか。本書によると技術的・構造的な欠陥に加え,個人や組織にもその要因が垣間見えるという。後者は失敗学の元祖といえる本であり,大東亜戦争における諸作戦の失敗を日本軍の組織としての失敗ととらえた反面教師的な本である。


『自分の体で実験したい : 命がけの科学者列伝』
レスリー・デンディ, メル・ボーリング [著] ; C.B.モーダンイラスト ; 梶山あゆみ訳(紀伊國屋書店、2007年)

医学の世界では実験動物を使って治療法の効果などを検証してきた。それでもやはり,人間を使わなければ意味のない実験もある。しかし,熟知すればするほど,その実験につきまとう危険を誰よりも知っている。リスクは大きいが,その結果を今すぐ知りたい。その葛藤の末,好奇心に突き動かされた研究者は,ついに自分を実験台とする。この本は,そうした実験を紹介している。もちろん,現代の科学者がみたら失笑噴飯のおバカな実験もあるが,当人は至って真面目に取り組んでいたはずである。今我々が行っている実験は,はたして,未来の研究者が見たら真っ当な研究者の取り組んだ実験と思ってもらえるのだろうか?気になって仕方がない。

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『ご冗談でしょう、ファインマンさん』岩波現代文庫 ; 社会 ; 5-6
R.P. ファインマン著 ; 大貫昌子訳( 岩波書店、2000年)

最後に読み物を一つ。ノーベル物理学賞を受賞したファインマン博士の自伝書。幼少期から大学時代にかけてのエピソードは面白おかしく語られていて,一時期,私も物理学者になりたいという夢を持った。ファインマン博士は少年の心をいつまでも持ち続けた偉大な物理学者だった。あこがれの存在である。続編「困りますファインマンさん」もお薦め。

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