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永浜 明子 先生(スポーツ健康科学部)

2018.09.14


『芸術と科学のあいだ』
福岡 伸一 著(木楽舎:2015)

たえまなく移り変わりゆく動的な世界のあり方をなんとかして捉えたいという希求。芸術と科学が分離してしまう前の、実に豊かな17世紀に生きたフェルメールにこの生物学者は傾倒する。現存するフェルメールの作品37点のうち、36点は世界各地を巡礼して現地で鑑賞した筆者が唯一対面していない1点が競売にかけられるという。
筆者は2005年時点でカズオ・イシグロの春樹に先んじたノーベル賞受賞を予見、2017年実現したのは周知の通りである。

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『死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい』
小林 弘幸 著(幻冬舎:2017)

ええっ ほんまかいな? 毎日、どこかのテレビで「からだにいいこと」を取り上げているし、各地ご当地体操も花盛り。似たりよったりと言えども、真面目に実行すれば、それなりの効果は望めるに違いない。そこをスクワット1本に絞ったところがやる気を誘う。初回朝夕各5回から6週間のメニュー付き。筆者は自立神経関係の名医。全身の筋肉を鍛え、老化を防ぐという。健康長寿をお望みなら、まずは1週目から軽い気持ちで、さあ始めよう。

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『原爆の図(普及版完本)』
丸木 位里 ・ 丸木 俊 著(小峰書店:2000)

本書は、丸木位里・俊夫妻が32年かけて共同制作した屏風連作「原爆の図」の普及版である。おそらく「原爆の図」の1部をどこかで見たことのない人は少ないだろう。しかし、第1部「幽霊」から第15部「長崎」までの全てを通して見た人は多くはないだろう。原寸作品(180×720)の迫力には及ぶべくもないが、この普及版を手に取れば、息をのみ、吐き気に襲われながら、ひとがひとに何をしたか、ひとという存在について、深く考えることになるだろう。

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『死の壁』
養老 孟司 著(新潮社:2004)

「人生の記憶は父親の死から始まっている」「解剖学を専攻した理由の一つも、そこにあるかもしれない」「父の死を本当に受け止められたのは、30代の頃だった」という養老さん。「死んでいようが生きていようが、人は人だ」と彼は言う。死しても「人間としての尊厳」が存在する。私は嬉しくなった。私の父も「ささやかながらできること」として献体を選んだ一人だからである。かくして、私も「父の死」を今受け止めている。

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『がん哲学外来へようこそ』
樋野 興夫 著(新潮社:2016)

がんを「哲学する」外来? とにかく初見であり、初耳である。外来であるが、料金は無料。悩みの解決ではなく、解消と提唱者の樋野医師は言う。大学や病院から外に広げた「対話の場」。今では全国に80か所。「今できることは何か」例えば「余命告知」をどう考えるかなど具体的に紹介されている。正に生き方を問う「哲学」である。がんで今を苦しんでいる多くの人のために、「外来」や「カフェ」がさらに増設されんことを。

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『あのころはフリードリヒがいた』
ハンス ・ ペーター ・ リヒター 著、 上田 真而子 訳(岩波書店:1993)

ドイツ人の手によるユダヤ人迫害証言の書。誕生日が1週間違いの「ぼく」とフリードリヒ。「ぼく」らが8歳の時、ユダヤ人のフリードリヒは「ぼく」と共にドイツ少年団に参加、無邪気な高揚感を楽しんだのだが…。一方13歳の「ぼく」は、打ちこわしの現場に出会い、好奇心から乱暴狼藉を働く。ドイツ全体が徐々に反ユダヤの嵐に巻き込まれて行く。隣人愛も友情も究極の選択を迫られ、フリードリヒは17歳で孤独な死を遂げた。註と年表が読解を助ける。

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