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長積 仁 先生(スポーツ健康科学部)

 


今回のテーマ:行為と現象の意味と本質を見極めよう!

『データはウソをつく : 科学的な社会調査の方法』
谷岡一郎著(筑摩書房、2007年)

世の中に蔓延している社会調査データの過半数はゴミ!と具体的な事例を数多くあげ、いい加減なデータやゴミのようなデータを生み出さないために「やってはいけないこと」を中心に書かれたのが、「『社会調査』のウソ」。その前作に続き、本書では事実を認定するために必要な考え方、また踏むべき手続きやプロセスについて詳しく説明されています。社会科学系の学生は必見!いしいひさいちさんの4コマ漫画がポイントで提示されているのですが、科学的な知識とスキルを持ち備えなければ、漫画の内容は、笑い事ではないかも…。

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『八月十五日の神話 : 終戦記念日のメディア学』
佐藤卓己著(ちくま新書 、2005年)

「8月15日は終戦記念日…」と何の疑いもなく、認識している人が多いと思いますが、降伏文書に調印した9月2日が国際的には終戦日と認識されているにもかかわらず、なぜ日本だけが8月15日に注目しているのでしょうか?また玉音放送を聞いて、うなだれる人々の写真や映像を目にしたことはあると思いますが、その写真は、玉音放送前にカメラマンが要求したポーズを子どもが演じ、それを撮影したものであるということが、後にその被写体であった子どもたちの告白によって、その事実が判明しました。そもそも当時の時代背景を考え、天皇陛下がお話されているときに、写真を撮影することなど、そもそも考えられない行為といえるでしょう。常識として根付いていることを、改めて検証するというひたむきな姿勢をこの本から学ぶことができます。

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『影響力の武器』
N.J.ゴールドスタイン, S.J.マーティン, R.B.チャルディーニ著(誠信書房、1991-2009年)

ほしくもないものを、思わず買ってしまった!そういう人にとって、この本は、痛快といえるでしょう(笑)。特定分野で権威のある専門家がいうことや指示を盲目的に受け入れてしまう…自信がないときや状況が曖昧で不明確なときほど、人は他人の行動が正しいものだと期待する…どうでしょうか?そんなことない!と思っている人、病気で弱っているときにお医者さんにかけられた言葉や指示、絶対に疑わずに守りますよね…。また試験前でテンパっているときに、目の前でテスト勉強している人を見たら、その人の勉強している内容や情報を何の疑いもなく信じますよね…。誰もが陥りやすい罠や手口、そんな事例を取り上げ、人間の行動を決定させているのは、理性ではなく感情であるということを、この本は社会心理学の理論に基づいて説明しています。

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『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』
ロバート・フルガム著(河出文庫 、1996年 他)

「事実を認定するための手立て」や「真実を明らかにするためにひたむきに検証を重ねる」といったことを、厳しく問いただし、そう見つめる姿勢が重要…と他の本の紹介でしておきながら、この本の「はじめに」の下りには、「想像は事実より強い」「神話は歴史よりも意味深い」「夢は現実より感動的である」などという言葉が記されています。シビアな環境に身を置き、自らを高めることは重要ですが、何かに急き立てられ、過剰なストレスを背負って、絶望感を味わい、ボロボロになって生きることや、ズルをしてまで、また人をたぶらかしてまで何かを勝ち得ることは、とてもハッピーだとは思えません。「ありがとう」と感謝の気持ちを表すことや、人を傷つけたときに「ごめんなさい」ということなど、地域や社会という空間で我々が生きていくために、当たり前のようで、大切なこと、それに気づかせてくれる一冊です。

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『ディズニー7つの法則 : 奇跡の成功を生み出した「感動」の企業理念』
トム・コネラン著(日経BP社 、1997年)

ディズニーランドにあるメリーゴーランドの馬のたてがみは、毎日、金箔が塗られ、メンテナンスされている!?それは、ゲスト(お客様)に対する外向きのメッセージではなく、パーク内で働くキャスト(従業員)に対して重要なメッセージを発しています。ディズニーランドが人々に夢と感動を与え、卓越したサービスを提供し続けられる理由がこの本に数多く記されています。アルバイトであろうが、正社員であろうが、サービス業に携わっている人、またその様な職業に将来携わりたいと思っている人は必見!世界中の人々がこの本に書かれているような価値観を持てば、世界はハッピーになる?

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『ディズニー化する社会 : 文化・消費・労働とグローバリゼーション』
アラン・ブライマン著(明石書店、2008年)

世界中の人々を魅了するディズニーというテーマパークが、様々な社会制度や慣行に影響を与えてきたと思われる点に注目し、筆者がいう「ディスニーゼーション(Disneyization)」が消費やグローバリゼーションにかかわる問題とどの様に関係しているのかが論じられた本です。
冒頭で、「ディズニーゼーション」と「ディズニフィケーション」の違いについての説明がなされ、従来から否定的に使われてきた後者の言葉と区別し、ディズニー化する様相を中立的な用語で捉えています。特におもしろいのは、同義語として捉えられてきた「マクドナルド化」という言葉との差異を指摘している点です。生産と消費の合理化というビジネスモデルを提示した「マクドナルド化」は、平準化・画一化・均一化を社会にもたらした一方で、非日常的な経験の創出を目的とする「ディズニー化」は、「テーマ」という鍵概念に基づき、むしろ、社会に差異をもたらしたと肯定的な解釈が加えられています。この命題が、真か偽か、それを我々自身がいま実証している最中というのが、ちょっと滑稽なのですが…(笑)。

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『スポーツマンシップ立国論 :「尊重」と「覚悟」を育むスポーツマンシップ立国論 : 今求められる人材育成戦略』
広瀬一郎著(小学館 、2010年)

"スポーツマン"という言葉を聞けば、皆さん、どのようなことをイメージするでしょうか?「スポーツがうまい人」「スポーツが好きな人」ということを思い浮かべる人が多いことでしょう。スポーツ大会の開会式で「選手宣誓」を行う際に、「スポーツマンシップに則り…」という言葉が頻繁に用いられますが、この言葉を正しく理解している人は、どれほどいるのでしょうか?
ケンブリッジ英英辞典で"sportsman"という言葉を調べてみると、2つの説明が加えられています。1つは、確かに「スポーツをする人、とりわけ、うまい人」という意味が示されているのですが、もう1つは、「相手選手やチームに対して、尊敬や公正さを示すようにスポーツをプレイする人」と記されています。相手に対して、「敬意を払う」という行為は、何もスポーツに限ったことではなく、人間が生きていく上での全ての行為に共通する重要な事柄です。スポーツマンシップに対して理解することは、日本社会にとって大切な人材育成につながると筆者は語っています。
W杯サッカー欧州代表の決定戦で「ハンド」を犯したフランス代表のアンリ選手の事例、またジョージ・シラー選手がつくった257安打というメジャーリーグ年間最多安打記録を塗り替えたときにも、WBC決勝の韓国戦で決勝タイムリーヒットを放ったときにもガッツポーズどころか、表情1つ変えることのなかったイチロー選手の振る舞いなど、多くの事例からスポーツの本質とは?スポーツマンシップとは何か?ということを、この本から感じ取ることができます。

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『スポーツルールはなぜ不公平か』
生島淳著(新潮社 、2003年)

ソウル・オリンピックで鈴木大地選手がバサロ泳法を武器に金メダルを獲得した後、このバサロ泳法に制限がかかった…1990年代にスキー・ジャンプ競技で、「日の丸飛行隊」と呼ばれるような活躍を遂げると、スキー板の長さが制限された…などなど。日本人が金メダルを取ったり、活躍したりすれば、なぜルールが変わるのか?ある意味、日本人の活躍をねたむかのように、何とも悲しく、釈然としなかった疑問にこの本は答えてくれています。
ただ、この本のポイントは、タイトルにあるような「不公平さ」を追求するというよりは、むしろ、「ルールのルーツを探る」という点にあり、本来、ルールが何のためにあるのかということに気づきを与えてくれるものです。つまり、ルールは、我々の行為を制約したり、堅苦しくしたりするという類にものではなく、人生を楽しむため、またゲームを楽しむためにつくられたものであるという、ルールが存在する意味について、考えることができるでしょう。

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『マネー・ボール : 奇跡のチームをつくった男』
マイケル・ルイス著(ランダムハウス講談社 、2004年)

費用対効果…ビジネス界では、当たり前のことですが、こと野球界において、この様な発想はなかなか抱かれませんでした。「ダルビッシュ、史上最速の5億円プレイヤー!」「涌井投手、球団との隔たり埋まらず、年俸調停へ」などなど…「ストーブリーグ」といわれるように、シーズン終了後は、選手の移籍と契約更改の話題がスポーツ新聞を賑わしますが、選手の「査定」や「評価」という行為は、容易なことではありません。
その様な野球界で、ヤンキースの年俸総額の3分の1程度の金額で高い成果を残し、球団経営に風穴を開けたのが、本書の主人公であるアスレチックスのビリー・ビーンGMです。この本では、「選手の将来性には期待しない」「初球から振っていく積極的な打者は、どれだけ打っても評価しない」「チャンスに強いなどというふれこみは、一切信用しない」など、「球界の常識は、ビジネスの非常識?」といわんばかりの刺激的な内容が記されています。来シーズンから松井秀喜選手が在籍しますが、彼のバッティングスタイルは、確かに初球打ちなどしませんし、フォアボールや二塁打の多いので、それが評価されたのかもしれません。
「貧乏球団躍進の理由!」「アスレチックスに学ぶスポーツビジネス」と、本屋のビジネス書コーナーを賑わすほど、注目された一冊です。まぁ、アスレチックスのような球団の存在が際立つのは、ヤンキースのような球団の存在があってこそ…なのですが…(笑)。

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『無縁社会 : "無縁死"三万二千人の衝撃』
NHK「無縁社会プロジェクト」取材班編著(文藝春秋 、2010年)

「無縁死三万二千人の衝撃」というタイトルのみならず、身元不明として告知される「行旅死亡人」、孤独死の現場を整理する「特殊清掃業者」、家族の「遺体引き取り拒否」など、この本では、ハッとするような言葉が数多く並び、地縁や血縁が崩壊した日本社会で、"ひとりぼっち"の無縁死は、もはや他人事ではないという警鐘を鳴らしています。
この本では、結婚を選択しない単身化やツイッターのような薄い?絆しか持たない若者にも"無縁死"の恐怖が訪れているという様子が丹念な取材に基づき、綴られているのですが、衝撃的な事実が多く紹介されるあまりに、ついつい情に流され、問題の本質を見失いそうになってしまいます。この本が何となく結論づけているように、「個人主義が無縁社会と無縁死をもたらしている」と理解しがちなのですが、果たして本当にそうなのでしょうか?一個人が全体の中で責任や役割を遂行しつつ、独自性と自律性を発揮する個人主義という言葉の本来の意味を、少々、取り違えているのではないかという点が、若干、気になるところです。
いずれにしても、過度な干渉や煩わしさを排除するため、"絆"や"社会的関係"がますます希薄化していると指摘される現在だからこそ、他者に影響力をもたらしたり、迷惑をかけたりせず生きていくことはできないということ、また"持ちつ持たれつ…"や"互恵性"という人と人とのつながりや結びつきが根底にある上で、社会は成り立っているということを感じながら、本書が取り上げる事例の1つ1つを読み取ってほしいと思います。

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『遠距離交際と近所づきあい : 成功する組織ネットワーク戦略』
西口敏宏著( NTT出版 、2007年)

大統領であろうが、どんな人であろうが、世の中の人、全て5人の仲介者によってつながる?転職するときには、「親しい友人よりも遠い知人」の存在が役立つ?これらは、「六度の隔たり」や「スモールワールド」、また「緩い(弱い)ネットワークの強み」という有名な理論で実証されたことです。地域社会のみならず、企業なども組織内の関係がいびつになって、思うような成果が上げられないと悲鳴を上げる現在、風通しの悪い組織、またつながりが希薄になった地域社会に対して、処方箋を与えてくれるような内容が豊富な事例と理論に基づき、紹介されています。
タイトな関係は、より高い成果を上げるために重要である一方で、何とも息が詰まるような感じに受け止められがちです。とはいえ、薄い絆や緩いつながりで大丈夫?という不安もよぎることでしょう。この本の記されたネットワーク組織の成功の鍵は、本のタイトルにあるとおり、「信頼関係で結ばれたスモールワールド」と「適度に遠隔な関係のつなぎ直し(リワイヤリング)」にあると記されています。ネットワーク組織の問題を考える際のテクニカルターム(専門用語)もコラム形式でわかりやすく説明されており、地域社会、企業、また部活動など、組織としての成果を上げるためにその関係性を見つめ直したいと考えている人にとっては、大変ヒントになる一冊です。

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