立命館大学図書館

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大川 隆夫 先生(3)(経済学部)

2020.08.05


図書館から依頼を受けた時に、書物の選定において、次の三つのルールを課しました。

①ある書物から派生して、他の書物に向かうことができるようにすること。
②現時点でも文庫で入手可能なものに限ること。
③出版社を1社に絞ること。(→こうすると大学生協でフェアを組んでもらいやすい。)

以上の基準を適用し、ハヤカワNF文庫から10作品を選定しました。これらの作品がみなさんの読書体験に少しでも寄与できればうれしいです。

今日でも、本といえば紙媒体が主です。2011年、日本製紙石巻工場は津波に襲われ、本になくてはならない紙が入手できない状況になりかけました。そこからの奇跡的な復活劇を知りたい人は「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」を読んでください。感動すること請け合いです。

本の種類って多いですね。マニアックなこんなモノでも売れるのか?と思うような作品を聞いたことのない出版社が出してます。これについてなぜ?と思った人は「ロングテール」がお勧めです。一部のヒット作と大多数のそれ以外の作品群とで形成される反比例みたいなグラフの長い右側部分をロングテールといいます。映画でも音楽でも同じグラフが描けますが、電子化の進んだこれらは、今ではタダで楽しむっていう感じになってしまいました。なぜこうなってしまったのか?それを知りたい人は「誰が音楽をタダにした?」を読んでみてください。

売れなくなった状況を打開するために、どんな手を企業は使うのでしょう。それについて興味のある人は「予想どおりに不合理」を読んでみてください。行動経済学の知見はビジネスに有効ですし、私たちが買い物する時にだまされないためにも有効です。

さきほどの反比例みたいなグラフですが、実は、縦軸に回数、横軸にマグニチュードをとっても同様のグラフ(べき乗分布)が描けます。このグラフはいろんなものに応用が可能なのです。それについて知りたい人は「歴史は『べき乗則』で動く」にチャレンジしてみてください。ちなみに全くランダムに物事が決まれば、釣り鐘型の形のグラフになります。歴史がべき乗分布になるということは、人間の意思決定が影響を与えています。それを大づかみにしたければ「繁栄」や「国家はなぜ衰退するのか?」をお読みください。

ロングテールもデータが整ったことから判明したわけです。野球に関してもデータの整備で見えてきた「必勝法」のようなものがあります。それについて知りたい人は「マネーボール」をぜひどうぞ。加えて、野球のように将来的にはビッグデータを用いてAIが色々と判断する世の中になるでしょう。問題は、この判断は人の手で行わればなりません。そのためには、AIに倫理を「教え込む」必要があります。私たち自身が「これからの『正義』の話をしよう」を読んで、倫理に関するリテラシーを高めておく必要あると思います。

最後に、みなさんに質問です。なぜ、人の作ったものを享受すると、私たちは感動するのでしょうか?不思議ですよね。実は、人間にはそのような機能が備わっているのです。このことがあるからこそ社会が成立しているのです。それについて知りたい人は「ミラーニューロンの発見」をぜひどうぞ!


『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている:再生・日本製紙石巻工場』
佐々涼子著(早川書房、2014)

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『ロングテール:「売れない商品」を宝の山に変える新戦略』
クリス・アンダーソン著;篠森ゆりこ訳(早川書房、2006

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『誰が音楽をタダにした?:巨大産業をぶっ潰した男たち』
スティーヴン・ウィット著;関美和訳(早川書房、2016)

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『予想どおりに不合理:行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』
ダン・アリエリー著;熊谷淳子訳(2013

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『歴史は「べき乗則」で動く:種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』
マーク・ブキャナン著;水谷淳訳(早川書房、2009)

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『繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史』
マット・リドレー著;大田直子,鍛原多惠子,柴田裕之訳(早川書房、2010)

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『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』
ダロン・アセモグル,ジェイムズ・A・ロビンソン著;鬼澤忍訳(早川書房、2013)

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『マネー・ボール:奇跡のチームをつくった男』
マイケル・ルイス著;中山宥訳(早川書房、2013)

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『これからの「正義」の話をしよう:いまを生き延びるための哲学』
マイケル・サンデル著;鬼澤忍訳(早川書房、2010)

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『ミラーニューロンの発見:「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学』
マルコ・イアコボーニ著;塩原通緒訳(早川書房、2009)

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