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安井 健悟 先生(経済学部)

 


テーマ : 「経済学と統計学の応用範囲の広さを知る」

『ベッカー教授の経済学ではこう考える : 教育・結婚から税金・通貨問題まで』
ゲーリー・S・ベッカー, ギティ・N・ベッカー著 (東洋経済新報社、1998年)

ノーベル経済学賞受賞者であるベッカー教授によるコラムをまとめたもの。ベッカー教授のノーベル賞受賞理由は、それまでの経済学が対象としてこなかった様々な人間行動にミクロ経済学を応用したことにあり、差別、教育、犯罪、家族形成など研究対象は多岐にわたる。本書も副題にあるように、教育・結婚から税金・通貨問題まで幅広いテーマを扱っており、一般に考えられているよりも経済学を利用できる対象が広いことを知ることができる。

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『ベッカー教授、ポズナー判事のブログで学ぶ経済学』
ゲーリー・S・ベッカー, リチャード・A・ポズナー [著] (東洋経済新報社、2006年)

一般に経済学者と法律家の意見は相容れないことが多い。本書はベッカー教授とポズナー判事による共同のブログにおける時事問題についての両者の議論をまとめたものである。ただし、ポズナー判事は経済学の学術論文も書いて「法と経済学」という分野に貢献しており、経済学に対する理解が深い。したがって、ベッカー教授と激しく対立することはないが、異なる視点を提供しているという点で経済学的思考を学ぶのに役立っている。

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『経済学的思考のセンス : お金がない人を助けるには』
大竹文雄著(中公新書 、2005年)

大竹教授による本書は日本における身近な問題から重要な経済・社会問題までを、経済学を用いて分かりやすく解説してくれる。各章のタイトルも「イイ男は結婚しているのか?」から「所得格差と再分配」まで様々である。キーワードは「インセンティブ」と「因果関係」。本書を読んで「へー、豆知識が増えた」で終わらず、経済学的思考方法を身に付け、様々な問題に役立てるようになってほしい。

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『こんなに使える経済学 : 肥満から出世まで』
大竹文雄編(ちくま新書 、2008年)

大竹教授をはじめとする23名の経済学者によるコラムを集めたもの。多くの学者が執筆しているので、『経済学的思考のセンス』よりも取り扱う対象が広い。「教師の質はなぜ低下したのか」、「株で儲かる「裁定機会」はあるか」、「耐震データ偽造を再発させない方法」など。現在(2010年9月10日時点)、内閣府参与として菅直人首相に助言している小野善康教授も「不況時に公共事業を増やすべきか」などを執筆している。私の「美男美女への賃金優遇は不合理か」も所収。

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『競争と公平感 : 市場経済の本当のメリット』
大竹文雄著(中公新書 、2010年)

新書としては大竹教授の最新書。標準的な経済学では市場競争で豊かさを実現し、その成果を政府が分配し直すことで格差に対処すべきと考える。本書は他国と比較して日本人が市場競争も肯定しないが政府も信用しないことをデータで示すところから議論を始め、市場競争とのより良い付き合い方を考えるヒントを与えてくれる。大竹教授らしく最新の研究を分かりやすく紹介しながら議論を展開しており、「脳の仕組みと経済格差」など興味深い話題も多いのが特徴。

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『ヤバい経済学 : 悪ガキ教授が世の裏側を探検する』
スティーヴン・D・レヴィット, スティーヴン・J・ダブナー [著] (東洋経済新報社、2007年)

アメリカに経済学ブームを巻き起こし、全米で170万部、全世界で400万部超を売り上げたベストセラー。経済学者のレヴィット教授の論文がベースだが、ジャーナリストのダブナー氏との共著であるため、一般読者にも読みやすい。レヴィット教授は先生や相撲力士のインチキをデータから見抜き、また犯罪発生率を大幅に引き下げた要因を突き止めるなどし、CIAからもその能力を必要とされるほど。今秋にはアメリカで映画が公開され、2010年9月23日には続編『超ヤバい経済学』も刊行される。

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『その数学が戦略を決める』
イアン・エアーズ著(文春文庫 、2010年)

本書はレヴィット教授の共同研究者でもあるエール大学のエアーズ教授によるもの。統計学や計量経済学で学ぶようなデータ分析が各種の意思決定に活用されている現実を紹介している。ワイン市場、野球、出会い系サイト、政府の政策決定や政策評価、医療、教育などの世界で、データ分析が経験と直感に基づく評論家よりも影響力を増してきている事例を数多く示している。数学が分からなくても問題なく読める。

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『「ジャパン」はなぜ負けるのか : 経済学が解明するサッカーの不条理』
サイモン・クーパー, ステファン・シマンスキー著 (日本放送出版協会、2010年)

タイトルの「ジャパン」とはサッカー日本代表のこと。スポーツ経済学者のシマンスキー教授とジャーナリストのクーパー氏によるイギリス版の"Why England Lose"に日本版のために書き下ろした章を追加している。元々はイングランド代表がW杯で期待されながらなぜ勝てないのかとサッカー市場についての経済学・統計学を用いた分析を、一般の読者にも分かりやすく書いたものである。ザック監督を日本代表に迎えたことは本書の提案通りであり、結果が出るかが見ものだ。

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『マネー・ボール : 奇跡のチームをつくった男』
マイケル・ルイス著(ランダムハウス講談社、2004年)

2011年に公開されるブラッド・ピット主演映画の原作であるノンフィクション。ブラッド・ピットが演じるメジャー・リーグの球団オークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンがハーバード大学経済学部卒のポール・デポデスタらを採用し、統計学を用いたチーム編成によって少ない資金で強いチームを作り上げた最近の実話である。まだまだ統計学が使われていない分野は多く、利用することにより成功に結び付いた分かりやすい例。

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『その科学が成功を決める』
リチャード・ワイズマン著(文藝春秋 、2010年)

経済学初学者にとって、現実問題に経済学を応用したり、経済学で論文を書くことは難しいかもしれない。そのためには、世間で言われていることを疑う力も必要だろう。本書は経済学ではなく心理学の研究成果に基づいて書かれたものだが、様々な自己啓発本で言われていることを疑い、科学的根拠をもっているのかを検証している。「「自己啓発」はあなたを不幸にする!」、「大勢にモテようとする女は敬遠される」、「ほめられて育った子供は失敗を極度に恐れるようになる」など興味深い研究結果が目白押し。

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