立命館大学図書館

  1. TOP>
  2. 学習支援(学生向け)>
  3. 教員お薦め本>
  4. 豊田 祐輔 先生(政策科学部)

豊田 祐輔 先生(政策科学部)

2025.05.1


多様性から考える政策課題の解決


『多様性の科学:画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』
マシュー・サイド著、トランネット翻訳協力(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2021年)

画一的ではなく多様性を有する集団が問題解決においては重要であると言われているが、単に様々な人が意思決定に参加すれば良いわけではない。性別や年齢などの人口統計学的多様性だけでなく、考え方が異なるという認知的多様性の重要性、さらには無意識のバイアスなどの人が備えている特性を見極めることが重要である。本書では複数の視点で問題を解決する重要性を、9・11テロを未然に防げた可能性などの実例を踏まえて論じている。

貸出状況の確認  RUNNERS 


『災害とコンパニオンアニマルの社会学:批判的実在論とHuman-Animal Studiesで読み解く東日本大震災』
梶原はづき著(第三書館、2019年)

災害時のペット(コンパニオンアニマル)については、避難所にペットを連れて行くべきかどうかなど様々な議論が始まっているが、本書では東日本大震災における人間とペットとの相互作用や飼い主にとってのペットの意味などについて、多様性があることを示している。子どもよりもペットの数の方が多くなった昨今、多様な人が被災生活を送る上で、災害時に家族の一員であるペットとどう暮らしていくのかについて重要な知見を提示している。

貸出状況の確認  RUNNERS 


『災害女性学をつくる』
浅野富美枝、天童睦子編(生活思想社、2021年)

特に被災後の対応については、高齢の男性がリーダーとなって地域を引っ張っていく画一的な集団となった地域コミュニティが多く、女性の視点が欠けているとの課題が提起されてきた。本書は、近年の日本における地震災害を対象として、女性が人間と社会の復旧・復興の主体となることのできる社会を目指した災害女性学の構築を志向した書籍である。しかし、一般や大学生向けの入門書としての位置付けとなっており、学部低回生にも読みやすい。

貸出状況の確認  RUNNERS 


『巨大災害のリスク・コミュニケーション:災害情報の新しいかたち』
矢守克也著(ミネルヴァ書房、2013年)

「災害情報」をテーマに、政策科学にとって特に重要な様々な観点からの学術的議論や実践例が提示されている。また身近な課題である災害情報であることから、学問の実践への応用が理解しやすく、「リスク・コミュニケーションのパラドックス」など自分自身に置き換えて社会問題について考えることができる。

貸出状況の確認  RUNNERS 


『テキスト文化遺産防災学』
立命館大学「テキスト文化遺産防災学」刊行委員会著(学芸出版社、2013年)

本学の(当時の)歴史都市防災研究所のメンバーが執筆した本書は、災害時には優先順位が低くなりがちな広い意味での文化遺産防災について多様な学術分野からの研究例を紹介している。人の命が最も重要なことは言うまでもないが、復興にあたって当たり前にあったお祭りがなくなることによる地域文化やアイデンティティの喪失といった心理的復興など、災害前から考えておくべきトピックが詰まったテキストである。

貸出状況の確認  RUNNERS 


『大学の学びを変えるゲーミング』
近藤敦、豊田祐輔、吉永潤、宮脇昇編(晃洋書房、2020年)

ゲーム型の体験学習ツールである「ゲーミング・シミュレーション」について、学部授業における多様な学問分野での利用を平易に解説するとともに、実践例や開発方法についてまとめている。事前準備やファシリテーションなど講義と比較すると負担も大きいが、アクティブ・ラーニングや探求型学習の手法としても活用できる、大きな効果が見込める学習手法である。

貸出状況の確認  RUNNERS 


『測りすぎ:なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』
ジェリー・Z・ミュラー著、松本裕訳(みすず書房、2019年)

説明責任としても政策や活動などの評価を行うことが重要であるが、手段であるべき評価が目的となってしまうと、定量化できるものだけで効果を検証するという歪みを生じさせてしまう。本書は、そのような傾向に警鐘を鳴らしつつ、測定基準を活用する方法と限界を示している。政策研究においても特に政策評価の点で重要な指摘を与えてくれる書である。

貸出状況の確認  RUNNERS 


『Factfulness:10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』
ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著、上杉周作、関美和訳(日経BP社、2019年)

高校や大学で学んだことは年月が経つと古くなっていることがあるが、私たちは(昔の)知識や思い込みから現在の状況も推察しがちである。本書はそのような思い込みへ注意を払いつつ、社会を理解するためには生涯にわたって学び続け、情報を吸収し続けることの重要性を痛感させてくれる。政策課題の解決には最新の情報と多様性に基づいた意思決定が大切である。

貸出状況の確認  RUNNERS 


『問題解決のためのデータサイエンス入門』
松田稔樹、萩生田伸子監修(実教出版、2021年)

データ分析の書が数多出版されているが、本書は問題解決のためのデータ分析を強調している。筆者らが教育工学分野で提唱した「問題解決の縦糸・横糸モデル」をもとに構成しており、どのような問題になぜこのような分析を利用するのか(5W1H:What, Why, Where, When, Who, How)を理解しながらデータ分析の基礎を学べる入門書であり、政策課題の解決とも親和性が高い。

貸出状況の確認  RUNNERS 


『創造の方法学』(講談社現代新書)
高根正昭著(講談社、1979年)

古い書籍のため現在とは異なる内容(分析の苦労など)も掲載されているが、現在でも通用する研究の考え方の基礎についてわかりやすく説明している。どのように比較するべきかなど研究というものを理解する内容を平易に書いているため、学部低回生などにも読みやすい書籍である。

貸出状況の確認  RUNNERS