藤田 聡 先生(スポーツ健康科学部)
2021.09.01
『長生きできる町』
近藤克則著(KADOKAWA、2018)
高齢化が進む日本において、世界で有数の長寿国となった日本における最も重要な課題は健康寿命の延伸、つまり介護予防です。人が病気になる要因として遺伝子の影響が挙げられますが、それはわずか25%の貢献度であり、残り75%は個々人の生活習慣や環境の影響を受けることが明らかとなっています。運動や食事などの生活習慣が健康の維持・増進に重要であることは明らかですが、生活習慣の変容は困難です。本書は、われわれが住む街の環境が生活習慣に影響し、結果的に身体的・精神的な健康にも大きく貢献することを「コホート研究」という科学的なデータから導き出し、そこから日本の健康課題の解決へのヒントを与えてくれます。例えば近くに公園がある人の方が近くに公園がない人よりも運動習慣を有する人が多いことや、近くに安全な歩道や自転車道があると答えた人の方が運動習慣ありと答える率が高いなど、外的要因である街の環境が運動習慣と深い関係にあることが分かります。本書を読むと自身や家族が住んでいる街の環境をより一層意識し、健康的な生活習慣を獲得するヒントを得ることができるでしょう。
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『マインドセット:「やればできる!」の研究』
キャロル・S・ドゥエック (著), 今西 康子 (翻訳)(草思社、2016)
あなたは、自身の能力は生まれつき固定的で大きくは変わらない、と信じていますか?それとも、人間の資質は努力次第でいくらでも伸ばすことができる、と信じていますか?本書では人の“心の在り方”(マインドセット)が、その人が何を望むのか、そしてその望みが叶うかどうかに大きく影響することを科学的なデータに基づいて解説しています。スポーツからビジネスそして教育に至るまで、様々な分野で成功を収めてきたプロフェッショナル達の共通項がマインドセットであることを説明したうえで、マインドセットはトレーニングすることで“しなやか”に変えることが可能であることも説明しています。脳は筋肉と同じで使えば使うほど能力が向上するものであり、教師がどのように生徒に声かけするかが、その生徒の成長に大きく影響することも研究結果から示しています。教育者として、どのように学生達に日頃から声かけすべきか、を再考させられる良書です。
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『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』
ピアーズ・スティール (著), 池村 千秋 (翻訳)(阪急コミュニケーションズ、2012)
やらなくてはいけないと分かっていてもついつい先延ばししてしまう。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか?課題を先延ばしにする学生は早めに課題に取り組む学生と比較して成績が悪く、退学する確率も高いそうです。本書では人が先延ばししてしまう原因を科学的に分析しながら、的確な目標設定や環境を整えるなど、実際に先延ばしを克服するための行動プランを明確に提示することで、やるべきことに集中できる手法について説明しています。例えば、ダイエットをしている最中にもかかわらず、ジャンクフードに手を出してしまうのは、食品に含まれる栄養成分の絶妙な調節により、いくら食べても飽きない製品が作り出されていることについても触れており、消費者に物を買わせるマーケティングの手法を垣間見ることもできます。本書は、大学生活における優先順位を明確にし、先延ばしの癖を改善して良い習慣を身につけるきっかけを作るツールとして活用できると思います。
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『Unlimited power : the new science of personal achievement』
Anthony Robbins(Pocket Books、2001)
「自信を持って行動しよう!」「失敗を恐れずにチャレンジしよう!」こういった心がけが大事だ、と感覚的に知っていても、行動に移すのは簡単ではありません。本書では、明確な目標設定とその目標に向けた具体的な行動を明らかにすることが、なぜ目標の達成に重要であるかを、社会心理学的な観点も踏まえながら解説しています。高い目標に向けたチャレンジの中で繰り返し失敗し、挫折しそうになった時も、信念の持ち方次第で、その状況を更なる成長の肥やしにできる心理的アプローチは、大学生活の中でも活用できる手法です。人間の行動が、痛みを避けたいあるいは快楽を得たい、という自身の経験に基づく判断であることを逆手に取った手法は、運動習慣や学習習慣を身につけるためにも活用できます。1986年に出版された本書は、現代社会においてもライフハックとして実用的です。
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