立命館大学図書館

   
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「第2回:幅広い教養を身につけよう!」秋葉 武 先生(産業社会学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 北原(産業社会学部3回生)

秋葉 武 先生
秋葉 武 先生の研究概要

―― 先生はどのくらいの頻度で図書館を利用されますか?

衣笠図書館は、2週間に1回くらいです。修学館を含めると、週1回ぐらいは利用しています。

―― どのような本や資料を利用しますか?

古い書籍が中心です。今はNPOの歴史研究のために、戦後日本の市民運動の研究をしています。そのために、古い書籍を多く利用します。そうした理由もあり、図書館の中でも書庫をよく利用します。
立命館は伝統校かつ大規模校なので、古い本があり、冊数も多くて便利です。

―― 学生時代はどのくらい図書館を利用していましたか?

今のようにインターネットがなかったので、よく利用していました。学部生時代は週1回くらい、院生時代は週2回くらいの頻度で利用していました。
昔は、資料といえば書籍が中心でしたが、今はネットがあるので、図書館の利用のスタイルも変化しています。教員も、検索サイトで本や論文のタイトルをキーワードとして検索して、それに関連する情報を抽出し、図書館でその論文などがないかを調べるというスタイルで利用します。

―― 図書館に希望することは何かありますか?

この大学の図書館はよい図書館ですので、希望などは特にないですね。スタッフもよく訓練されていて、サービスもいいです。普通の国立大学などのスタッフのサービスよりは、よっぽどしっかりしています。国立はもともと官であり、かなりお役所仕事的だと思います。きちんと検索してくれなかったり、時間に厳しかったり。ある国立大学では、その本があるというので利用しに行ったら、前日に学生が借りていってしまった、なんてこともありました。
私大の伝統校では、そういうことはなく、サービスがしっかりしていると思います。
また、図書館のデータベースはありがたいです。利用できるデータベースの数も多いですし、そういうところの豊富さも、大規模校ならではですね。

―― 学生へ、図書館の利用の仕方についてアドバイスはありますか?

今の学生はネットやwikipediaの情報に頼りすぎていると思います。昔だったら、何日も図書館にこもって、いろいろな本をしらべなければたどり着けなかった情報に、今は簡単にたどりつけます。それはよい面もありますが、不確定な情報や、偏った情報もあります。そういう情報を知って、それで分かった気になってしまうのが問題です。
今の学生は、あるひとつのテーマについて調べることは得意なのですが、2つ3つと複数のテーマを合わせて考えることは苦手だと思います。昔は、ひとつのテーマにたどり着くために様々な情報を経由していたので、結果的に複数のものを結びつけて、深い理解が出来たのだと思います。
しかし今は、ピンポイントで情報にたどり着けすぎます。Wikipediaで調べたい用語を検索したら、一発で情報が手に入ります。よい面もありますが、深い理解には不利だと思います。
学生も、卒業論文を書き始めると、そういうところに気づいてくるのですが、基礎演習だと、学生は非常にインターネットに頼っています。中にはインターネットからそのままコピーペーストする学生もいますが、そういうのは「こんなうまい文章をなぜ書ける!?」と、すぐに分かりますよ(笑)

―― よく読む本はどのようなものですか?

専門の研究によく使うのは、海外のNPO学会誌です。学会誌は日本にもありますが、やはり海外、特にアメリカのものが豊富です。なので、海外の文献を利用することは多いです。
プライベートでは、「唯識」に関する本にはまっています。大学の図書館からも、『やさしい唯識』という本を借りて読んでいます。唯識とは、昔、仏教の修行僧が人々の心理を解き明かしていった思想です。
大学の図書館では、研究書ばかりではなく、プライベートな本も利用しています。

―― 学生はどう本を読めばよいでしょうか?

NPOや国際ボランティアに興味がある学生は、そのNPOが扱っている社会問題そのものよりも、その社会自体の背景を勉強することが大切です。そのほうが、後々自身にとってプラスになる。例えば、アフリカの国際援助に興味があれば、アフリカの文学を読む。アフリカには世界的に優れた文学があるが、そういうことは日本ではあまり知られていません。アフリカの問題に関心がある学生でも、そういうことを知らない人は多いのです。
大学の勉強に直接繋がるような、ピンポイントな勉強だけでなく、広く深い理解が必要です。社会人になったときも、そういう考え方をすれば、仕事に幅が出ると思います。なので、学生の皆さんは、ピンポイントで役に立つものだけでなく、深く幅の広い分野の本を読むとよいと思います。

最近では海外に出る日本人がおおくなっているが、欧米では、よくも悪くも、文学や社会問題の話が出来ないと、かなり露骨に「値踏み」されてしまいます。その時も、欧米の作家のことを知っているかどうかということではなく、日本なら日本の作家について、どれだけ深く話せるかというところをみられます。この人がどれだけモノを深く考えられるかということを、そういう基準ではかっているのでしょう。このような時にも、深く広い教養が求められますので、学生の皆さんはそういう学習をするのが良いでしょう。

―― 近道して自分のほしい情報だけを手に入れるより、遠回りしてでも、広く深い知識を身につけることが、役に立つのですね。なるほど。貴重なお話、ありがとうございました。