立命館大学図書館

   
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「第3回:書籍と情報技術は補い合う!」手塚 太郎 先生(情報理工学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 村岡(情報理工学部3回生)

手塚 太郎 先生
手塚 太郎先生の研究概要

―― 先生はどのくらいの頻度で図書館を利用されていますか?

学生の頃は、今みたいに本が買えなかったので、週に1回ぐらいの頻度で利用していました。今は時期にもよりますが、月に2回ぐらいです。調べものをしたり、分野ごとにどういった本が出ているのか、ざっと見たりします。あとは、場所を変えて仕事をするのが好きなので、図書館の環境がいいこともあって、勉強するためによく利用しますね。

―― 本のどのようなところに魅力を感じますか?

本はいろんな意味ですばらしいです。一冊の本が作り出されるまでには相当な手間がかかっているため、ネットで手に入る情報の中でも良質なものに比肩すると思います。また、見やすさ・読みやすさという点でも優れている。最近はウェブなどで調べて済ませてしまう学生さん増えているようですが、それだけでは中途半端な調べ方で終わっていることが多いのではないでしょうか。

―― そうですね、インターネットは便利なのでついつい頼ってしまうんですよね。

やはり、良質な情報を得るには、図書館に足を運んでもらいたいと思います。図書館は、足を運んでから良質な情報を得るまでが近いです。ネットは、入り口は近いですが、検索の達人ではない限り良質な情報を得るまでが遠いです。

―― そうなんです、いつもGoogleなどの検索結果の上の方にある情報で済ませてしまいがちなんですよね。でもインターネットが悪いっていうことではないんですよね??

そうです!たとえばプログラミングのような分野は、日々情報が変わっていくものだから、本がちょっと古いだけで、頼りないときもあります。だから、ネットと本は「補い合うもの」だと思います。最新の情報を得るためにはネットを、変わらない基礎的な情報を得るには本を利用するのがよいのではないでしょうか。

―― なるほど。では先生は、どのように本を利用されていますか?

昔から本に書き込むのが好きなので、最近は借りずに買ってしまいます。ノートに書き込むよりも、本と対応しながら読み返すことができるので。でも最近は、パソコンを開いてメモを取っています。エディタを使ってテキストファイルで保存し、記号はLaTexの書式で書いてます。あとで検索できるのがとても便利です。

―― 読みながら書いているんですね。検索もできるなんてスゴイですね!

そうなんですよ、すごく快適です。本に書き込まずに済むのであれば、図書館の本も昔より効果的に使える気がします。

―― 新しい本の使い方ですね!

なので、本に書き込みをしたくてたまらない人にとっては、本と情報技術を連動させるのがひとつの方法かも知れませんね。つまり、紙の本「対」情報技術ではなく、紙の本「&」情報技術ということです。今は情報技術が紙の本を駆逐するように思われているかもしれませんが、ひょっとしたら生物と機械の融合であるサイボーグのように、本と情報技術が合体することで凄いモノができるかもしれませんね。

―― 電子ブックもその一つですか?

そうそう!でも今は読める本が限られているので、もっと進んだ融合が実現できたら、検索もでき、何冊もデータが入り、持ち運びも簡単になるので便利になりますよね。

―― 実践してみたいですね。では次に、先生から図書館への要望はありますか?

そうですね……。本に書き込みできるようにして欲しいとか、無茶な要望しか出てこないですね(笑)。あの図書館はすでにすごいと思っているので。借り方や延長操作も簡単ですし。ただ、研究室から図書館が遠いのがちょっと。もっと気軽にアクセスできればいいのですが。あとは、足りない文庫が若干あると思います。本屋さんには大体どこにもある文庫がなかったりします。新書はかなりそろっているようですが、もっとマイナーな新書を置いていただけたらと思うこともあります。

―― 新しい文庫・新書のシリーズが少ないですよね。他にどんな要望がありますか?

表紙カバーや帯を捨ててしまうのはもったいないと思いますね。出版社が表紙や帯を作るのにはかなりのエネルギーが注がれていますよね。表紙は本の魅力のひとつですし、カバーがなくなると本を手に取ろうというモチベーションを下げてしまうと思います。ただ、それらをすべて残そうと思ったら手間がかかりますよね。

―― たしかに、カバーがないだけで質素な感じがします。

そこで情報技術が活かせるのではないでしょうか。プラズマディスプレイを置いて、新刊の表紙をずらっと並べて表示しておく。手に取ってみようかという気持ちがわくと思いますよ。あるいはもっと簡単な工夫をするとしたら、今の新着本のコーナーは背表紙しか見えず地味なので、取り外したカバーとセットにした上で、表紙が見えるラックに置くと良いのではないかと思います。良い新刊が多く入っていることを学生が知るきっかけになるのではないでしょうか。

―― 先生のお薦めの本はありますか?

いくつか紹介させていただきますね。 まずはいろんな分野の学生さんに読んでもらいたい本として、『統計学入門』です。このシリーズはとても良いもので、基礎から簡単に書いてあります。統計学はこれからますます重要となってくるので、全学生にお薦めします。 あとは、数学の参考書なのですが、岩波の『キーポイント』シリーズです。具体例に即して要点をうまくまとめた非常にいい参考書です。図書館にこのシリーズが置いてあるので、皆さんの勉強の助けになると思いますよ。授業で分からないと思う所があったら読んでみるとよいのではないでしょうか。 もう一つは、『数学が育っていく物語』シリーズです。これは本当にいいもので、ぜひ全国の中学校・高校に置くべきだと思っています!中学生や高校生向けに書かれているものなのですが、やっている内容は大学の数学なんですよ。

―― キーポイントの一冊は授業でも使いました。他に全学部の学生にお薦めできるものはありますか?

まず、人類史上最高峰の文学として、『すばらしい新世界』をお薦めします。これは人類が受精卵に対する操作と条件付けによって自分に与えられた仕事が好きでたまらなくなった未来世界の話で、考えさせる内容を含んでいます。それから『ラ・ロシュフコー箴言集』。フランスでは昔、気の利いた毒舌を思いついてはシェアをして喜び合う集まりが頻繁に開かれていたそうです。これはそのような集まりで人気者だったラ・ロシュフコーという人の毒舌集で、延々と辛口の格言を紹介しています。「自分は人に好かれているという思い込みこそ、人に嫌われる決定打になる」「自分の過ちが自分だけにしか知られていない時は、我々はそれを容易に忘れてしまう」「喧嘩は片方にしか非がない場合は、長くは続かないだろう」「人は決して自分で思うほど、幸福でも不幸でもない」というように、毒舌というより、前向きなものも多いです。要約すると人間がいかに自己愛の塊であるかというのを述べている本です。お薦めですよ!

―― 最後に学生へのメッセージをお願いします!

皆さん、本と対話しましょう!本に書き込んだり、メモを取ったりして。あとは、皆さんよく海外旅行に見聞を広げに行かれると思いますが、図書館の扉の向こうには、海外旅行とは比べ物にならないくらいすごい世界が広がっていますし、本は人類の宝、財産ですよ。知っている人は知っている、図書館の価値です。

―― 図書館の価値とは本を上手く利用することで、自分の知識や見聞を深めることにあるのですね。そして、情報技術も使い方次第で、新しい本の世界が広がるんですね!今日は貴重なお話をありがとうございました。