立命館大学図書館

   
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「第4回:活字から想像をふくらませよう!」岸 道雄 先生(政策科学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 大北(政策科学部3回生)

岸 道雄 先生
岸 道雄 先生の研究概要

―― 学生時代にどれくらいの頻度で図書館を利用されていましたか。

ほぼ毎日です。空き時間の多くを図書館で過ごしていました。単に本を読むための場所というよりは、予習・復習や調べものなどトータルな学びの場として利用していました。

―― 図書館は工夫しだいで様々な使い方が出来るんですね。

図書館は、書籍だけでなく、学術専門雑誌や新聞、映像などから様々な情報を入手でき、なおかつ一番落ち着いて、思考を巡らすことができる場だと思います。
また、私の入学時に閉架式から開架式に代わり、多くの本を手に取ることが出来るようになりました。実際にページをめくって資料を選べられるようになったのはとてもよかったと思います。

―― 衣笠図書館も書庫への入庫手続きが簡単になり、誰でもすぐに入庫できるようになりました。より多くの本に触れて選ぶことが出来るのはとても嬉しいですよね。

―― 学生時代に影響を受けた本はありますか。

三浦綾子さんの『塩狩峠』ですね。大学3回生の時に、日が暮れたことさえ気付かずに、図書館で一気に読んだことを今でも覚えています。

―― ストーリーを簡単に教えてください。

一言で言えば自己犠牲の物語です。
他の人々を助けるために本当の意味で自分自身を犠牲にした、勇気ある人の話です。是非、皆さんも学生の時に読んで欲しいと思います。

―― その後の考え方などに影響しましたか。

一般論になりますが、感動することは人格形成の一部になると思います。
映画・本・テレビなど何かに大きな感銘をうけることは、将来どのような人間になりたいか、どのような人間でありたいかといったことに対して、意識的なり無意識的なりに大きな影響を与えているはずです。
だから、価値観が定まっていく過程の若い人たちに、様々な作品に触れる中で、自分なりに得るものや感動するものと出会い、その後にどうありたいかについて自分で考えるという機会をもって欲しい。考えることで自分自身のものにできるのだと思います。

―― 先生のように「私の1冊」といえるような本と出会えたらいいなと思います。

―― 現在の図書館の利用頻度を教えてください。

1ヵ月に一度くらいです。私が学生の時と比べて、今は図書館に行かずとも蔵書検索やデータベースを使っての論文検索ができるので、個人研究室で検索し、必要に応じて図書館(主に修学館)に行くようにしています。

―― 最近は電子化が進み、データベースもかなり種類が増えてきました。学生にオススメのデータベースはありますか。

新聞の記事検索は便利だと思います。もちろん、新聞記事だけでは研究できませんが、経緯や背景などの大枠を捉える上では非常に便利です。キーワードを入力して検索すれば、関連記事を時系列順に見ることが出来ますからね。

―― 出版社による論調の違いなどを読み取ってみるのも面白いかもしれませんね。データベースの中には辞書機能がついているものや企業情報を調べることが出来るものもあるので、どんどん活用していきたいと思います。

―― 現在どのような資料を利用されますか。

私の研究分野(パブリック・マネジメント)に関わる外国の専門雑誌(Journal)に掲載されている論文をpdfファイルでダウンロードしています。公共サービス供給における競争原理の導入のあり方、政府の業績測定、公会計、予算制度などについての論文が大半です。

―― 論文の本文をWeb上で閲覧できるサービスが増えてきました。現在のデータベースは十分ですか。

各研究分野によると思いますが、自分の研究分野で言えば、もっと多くの洋雑誌をカバーするデータベースを契約してもらいたいと思うことはあります。ただ、全ての研究者の要望に完全に応えることは、予算的にも難しいでしょう。毎年、各学部の教員の意向を調査し、計画的に拡充を図ることが大切ではないでしょうか。

―― 学生にお薦めの本があれば教えてください。

私の研究分野においては、『行政改革をどう進めるか』、『パブリック・セクターの経済・経営学』が比較的わかりやすく書かれてあると思います。もし行政改革、パブリック・マネジメントに興味があれば、一度読んでみて下さい。もちろん『塩狩峠』もお薦めです。

―― 先生は民間企業を経験されていると聞きました。民間時代に図書館を利用されることはありましたか。

出身大学の図書館をよく利用していました。国立国会図書館を利用することもありましたが、本の出納に時間がかかる上に、一度に閲覧可能な冊数が決まっているので、大学図書館の方が便利でした。特に洋雑誌の最新号、バック・ナンバーに関しては大学図書館が最も豊富だと思います。大学図書館はまさに「情報の宝庫」です。

―― 学生の活字離れについてどう思われますか。

もちろん映像には映像の良さがありますが、活字には「文字」という限られた情報しかないことが最も大きな特徴であり、それが活字の良さにつながるのだと思います。私は、活字はIMAGINATION+CREATIONの世界だと思います。活字は視覚的な情報をもたないため、読者は文字から映像をイメージしなければなりません。そしてそのためには、今までの経験や知識と結びつけることが必要となります。もし、その言葉の意味やイメージを知らなければ、その場で調べて新たに知識を増やすことも出来る。文字を読むことは、文字から映像をイメージし、今までの経験や知識と結びつけることで総合的に理解することなのだと思います。

―― なるほど。活字を読むことは、重層的な理解の積み重ねなんですね。

活字を読み、思い描き、理解し、疑問を抱き、調べ、さらに理解を深めるという過程を凝縮して経験できるのです。これは、すぐに何かに直結するわけではなくても、人格形成に関係してくると思います。また、視覚的な情報に縛られない分、イメージの幅が広がり、十人十色の活字の世界を楽しむことが出来るのではないでしょうか。

―― 活字には、学術的な情報という価値だけではなく、そこから想像を膨らませて自分なりの「何か」を創造できる可能性も秘められているんですね。たくさんの資料や作品に触れてより多くの感動や出会いを経験していきたいと思います。また、社会人になっても積極的に学ぶことを続けてこられた先生のお姿に尊敬と憧れを感じました。本日はありがとうございました。