「第60回:未来を創る」湊 宣明 先生(テクノロジー・マネジメント研究科)
インタビュー:学生ライブラリースタッフ 片桐、武田
2017.10.06
―なぜその分野に興味を持ちましたか。
元々、JAXAで働いていました。JAXAは宇宙航空でかなり最先端のことをします。イノベーティブな発想力、構想力が1つの仕事。もう1つは、1つのミッションを完璧に遂行しなくてはならず、確実に成功させる仕事で、この二つの仕事が大切です。この二つを研究に活かしたいと思い、宇宙航空のマネジメントの知識や宇宙航空のマネジメントの知識を今の研究に活かしています。
―先生の研究テーマについて教えてください。
研究テーマは大きく分けて二つです。1つは未来をデザインすることです。通常の研究は過去こういうことがあったから、未来はこんなかんじ、未来を積極的にこうなって欲しい、こうあるべきだ、みたいな議論を展開して、そこに至るまでにどんなことをやっていけばいいのかって言うのを考えます。研究開発をしますが、長いもので数年という研究成果が出て、製品化すると10年先とかになってしまうことがあります。今必要なものを考えてやっていると、未来の社会に合わないものができてしまいます。未来の社会を予測した上で未来に必要なものを今やり始めましょう。
もう一つ目は、システムデザインです。商品開発においてどういうアプローチを取ったらイノベーティブなのもが出来上がるのかということの研究です。従来はテクノロジーができてからそれを使って新製品ができました。また、顧客が欲しいものを作っていきます。この二つが中心です。これらをいかに融合させるかが大事で、具体的にやっているものはシャチハタ社との共同研究です。いろんなはんこの使い方を提案し、スマホで撮った写真をはんこにできる企業と一緒になって新商品とかを開発するときに、テクノロジーをどうやって入れていくのかという研究をしています。
―学生へのアドバイスをお願いします。
一言で言うと自分の頭で考えることが重要です。自分の頭で考え、自分で決め、自分で行動し、自分で修正する。この四つができるようになれば、社会に出ても何も恐れることはないと思います。学生時代に勉強をしすぎると、習う先の先生とか教科書がそこにあるのでは、それを探せばいいのではという依存症に陥る可能性があります。勉強することがだめではありませんが、常に答えがそこにあって、教えてくれる存在があると思うと成長が止まります。それを超えるためには、どこかでもう教えてくれる人はいないということに気付いて、真っ白な領域に飛び込んでいって、自分で考え、自分で決め、行動してだめだったら、修正する力さえ付けたらどんな領域でも前にすすんでいけるのではないのでしょうか。図書館にはたくさん答えの宝庫がありますが、これは見つかった宝でしかありません。見つかった宝が展示してあるのが図書館で、まだ見ぬ宝を見つけるためには自分の頭で徹底的に考えることが大切です。
―学生時代の図書館の活用方法を教えてください。
ほとんど使っていませんでした。独学が好きだったので、図書館でこもって何かやるっていうことはあまりしていませんでした。本に書いてあることはすでに過去、過去を学ぶよりは、自分で考えて自分で決めて行動して、結果見ながら修正するほうが大事で、教科書に載りそうなことを自分の頭で考えてやることのほうがすばらしいと思います。
―現在は図書館をどのように活用されていますか。
実はあまり行っていません。研究スタイルの違いかもしれません。文献をあてにする研究ではないので論文を書くときにだけ文献を使います。
―先生のお薦め本を教えてください。
私のお薦め本は「実践システム・シンキング 論理思考を超える問題解決のスキル」です。情報を集めてインプットして、考えて処理して、アウトプットすることが大事です。今の学生は、情報の集め方は上手で、アピールするほうもだいじょうぶですが、真ん中の情報を変換する部分がまだ頑張れるところがあります。頭の使い方を覚えるだけで、だいぶレバレッジ(1のインプットに対して何倍ものアウトプットできる)ができるので、その頭の使い方をしてもらう為に書きました。
目の前にある複雑な現象をシンプルに考えていきましょう。単純化するときに構造に着目します。物事がどういう因果関係で成り立っていて、インプット1に対してアウトプットが出てくるのかいうのを見極めていくという頭の使い方です。システムとは、複数のものがお互いに影響を与え合いながら、何らかの目標を達成するときにこれをシステムといいます。グループワークもシステム、政治もシステム、飛行機も車もなど分けてつながりを考えていき、このシステムシンキングという頭の使い方をみんながマスターすれば、もっと世の中が単純に見えるようになります。複雑なものは単純なものの寄せ集めでしかないということが理解できるようになります。最初から難しいことをする必要はなく、一つ一つの要素は単純で簡単なものでもいいので、それを組み合わせることで大きなものが成し遂げられるようになります。そういう発想を持って欲しいと思い、この本をお薦めします。
今回の対談で紹介した本
『実践システム・シンキング 論理思考を超える問題解決のスキル』、湊宣明、講談社、2016年