「第71回:今この時間を大切に」林 宏明 先生(薬学部)
インタビュー:学生ライブラリースタッフ 雲川、近藤
2019.06.11
―先生の研究分野について教えてください。
私の専門は天然物化学で、主に植物について研究しています。具体的に言うと、甘草(カンゾウ)と麻黄(マオウ)という漢方薬に使われる植物を世界中から採集して、その植物から取れる成分について研究しています。甘草でいうとグリチルリチン酸っていう甘い成分が含まれていて、これを植物がどうやって作るかを調べています。培養細胞を使ったり、酵母をつかったり、実際に植物を育てて作らせたり色々な方法で試しています。また遺伝子レベルで作られる条件を調べたり、成分を追及してどんな薬に使えるかも考えたりしています。
麻黄についてはエフェドリンという物質について研究しています。これも同じように植物を採集して、成分や遺伝子を解析するのが主ですね。
―世界中に植物を取りに行くんですか?
はい。大学院の時には甘草を取りに、トルコに行きました。スペインやイタリア、そしてカザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンなどにも行きました。
―研究をしていて難しいことなどありますか?
目的の成分をなかなか作れないことですかね。私が持っている甘草中には3%ほどの目的成分が含まれているのですが、これを人間の手で一から作るのはとても難しいですね。3%というと少ないかと思われますが、作ることができる生物はとてもすごいと思います。
―学生の頃は図書館をどのように利用されていましたか?
私が学生の頃はインターネットとか無かったから、図書館にはよく行きましたね。学校の図書館だけじゃなくて、地域の図書館や古本屋にも行きましたね。専門分野の本もたくさん読みましたが、趣味の本関係でもたくさん図書館に行きましたね。私は歴史とか旅行が好きでしたから、そういう本をよく読んでいましたね。あとは英語の本も読みましたね。英語はやっぱり大切ですね。上手く発音するのは難しくて、ネイティブの人になかなか伝えるのは大変でしたね。私はドイツに留学していてパセリの研究をしていたのですが、どうしてもパセリを発音できませんでしたね。最終的には、green powder put on potatoって言ったら伝わったのが覚えています(笑)。英語は大切ですね。
―旅行がお好きなんですか?
旅行はたくさん行きましたね。学生時代は行きたいところは絶対に行きましたね。火山を見に八丈島や屋久島の南の方にある諏訪之瀬島に火山を見に行ったり、小笠原諸島に皆既日食を見に行ったりしました。私は火山が好きで、元々は火山学者になりたかったんですよ(笑)。諏訪之瀬島には一週間に一回しか船が来なかったので、飛行機の来ない飛行場に寝転がってゆっくりしたのも思い出ですね。
―先生が今まで印象に残った本はありますか?
私が今まで唯一英語の本で読みきった本が、『ハリーポッターと死の秘宝』。ハリーポッターを知ったのは子供と映画を見に行ったのが最初で、死の秘宝が出た時はまだ和訳が出てなくて、一気に読んでしまったから印象に残ってますね。
―洋書以外でもありますか?
私は小さい頃は推理小説が好きでしたね。横溝正史の推理小説とか読んでましたね。犬神家の一族とか。最近はどちらかと言うと本は辞書みたいに使うことが多いので子供のころの話ですけどね。
―他に人生に影響を与えた本などはありますか?
強いて言うなら『動く遺伝子 トウモロコシとノーベル賞』ですかね。
バーバラ・マクリントックっていう人の話なんだけど、この本には薬学部もそうなんだけど生命科学の最初のゆりかごのところの話が書いてあってね。コーネル大学の生徒がトウモロコシを栽培して遺伝について研究していて、そこから研究を進めていっていろんなことが分かってきたという話なんですよ。バーバラ・マクリントックって人はトランスポゾンの発見でノーベル賞を取った人で、ちょうど私が大学に進学する頃にノーベル賞を受賞されたからこの本を読んで、こう研究者でありたいなと思ったのをよく覚えていますね。
後はこの本ですかね。『森の分子生態学』。
生物の多様性とかの本で要は遺伝子を使うといろんなことがわかるって話の本ですね。植物も生き物だから遺伝子配列を調べるとお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんが居るわけですよね。遺伝子は個々のことをミクロにもわかるし、他との関係も全部わかってしまうんですよ。
立命館大学にも桜がありますよね。あれも調べれば全部分かっちゃうんですよ。全部家族だったりするかもしれないですね。ソメイヨシノなんて全部クローンなんですよ。
―最後に学生へのメッセージをお願いします!
まずはやりたいことをやってほしいですね。これは学生時代が一番できることだと思います。長期間旅行に行くとかは働き出したらなかなか出来ないし、やりたいことは時間のある学生のうちにやっておくべきかと思います。なかなか出来ないこともあると思いますが、目標をもって頑張ってみるのも大事かなと思います。やろうと思ったことは、やりましょう!あとひとつ言うなら、外国語ですかね。年を取ってからではなかなか頭に入らないし、若いころから沢山の語学関係の本とかビデオを見て勉強してほしいですね。最近は外国語を話せる人材が求められてきていますし。日本人は最近海外に出なくなってきていると思うので、若いうちから外国語を使って外国での経験を積んでほしいなと思います。
―林先生ありがとうございました!
今回の対談で紹介した本
『動く遺伝子 : トウモロコシとノーベル賞』、エブリン・フォックス・ケラー著 ; 石館三枝子,石館康平訳、晶文社、1987年11月