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「第72回:CGが作り出す夢」北原 聡 先生(映像学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 川合、佐藤、小野、福田

2019.10.22

―先生の研究テーマ「3DCG映像における映像表現」について教えてください。

実写に比べて自由度の高いCG映像において、逆に実写のように自然な流れを持った映像を作り上げるにはどうしたらいいか?がテーマです。

―先生の研究の魅力とその意義について教えてください。

CGの魅力は、まるで神様になったような気分を味わえる事じゃないでしょうか。つまり、自分で作った世界を100%自分でコントロールできる、ということです。CGでは実写と違って、画面に映るものすべてを、ゼロから自分で作らないといけません。地面や空すらも、自分で作る必要があります。但し、逆に言えば、全てを自分でコントロールできるという事です。ですから、ある意味でその世界の「神様」になったような気分を味わえます。

―CGのクリエーターとして活躍する際に最も重要なスキルはなんでしょうか

やはり絵を描くスキルです。音楽ができない人に音楽ソフトを与えたところで曲を作れないのと同じで、絵を描く能力が無ければCGもうまく作れません。例えば、金属の玉はなぜ金属の玉に見えるのか? それはハイライトがしっかりと入っているからです。それを知っていないとCGで金属の玉は再現できない。絵を描いている人は、そうした事を知っている、ということですよね。普段から絵を描いている人はそういった観察力が養われていますから、CGでも的確に再現することができます。こうした観察力を身に着けるため、CGをやりたい人には「とにかく絵を描け!」といつも言っています。

私の場合は、子供の頃から絵を描くのが大好きで、いつも我流で描いていました。昔はどんな画材があるかも知らなかったし、ネットで調べるなんていう術も無かったので、手近にあった0.5ミリのHBのシャープペンシル1本だけで描いたりしていました。タッチを変えるために、ペンを傾けたり、筆圧を変えたり工夫して・・・。

―手描きとCGで大きく違ったことは何ですか

CGの一番の利点は、何度でもやり直しがきくことです。手描きの場合は、1回失敗したら終わりです。紙に描いていた頃は、色を塗る段階で失敗してしまわないよう、まずは輪郭だけの状態でコピーを取り、それに試しで色を塗ってみてから、本番を塗ったりしていました。CGならアンドゥ(Undo)がきくので、何も恐れずに何度でも試すことができます。

―世界的に見てCG業界の動向や将来性についてどうお考えでしょうか。

将来性は無限だと思います。今まで何度も、「そろそろこれで頭打ちかな・・」と思ったことがありましたが、それを超える映像や映画などが次々と出てくるので、本当に無限って感じがしますよね。今後は映画以外にも、もっと新しいエンターテインメントの形がいっぱい出てくるでしょう。

―先生は学生時代図書館をどのように利用していましたか。

実はあまり利用していませんでした。時々、試験の前に勉強する場所として使っていたぐらいで、本を借りに行った記憶はあまりないです。本は、借りるというより、自分で買って持っていたいほうだったので。

―学生時代に印象に残っている本、又は映画を教えてください。

洋書で、ハリウッド映画のメイキング本や、コンセプト・アートの本、画集などをよく買っていました。「スター・ウォーズ」や「エイリアン」などの関連書籍、H.R.ギーガーの画集はかなりのお気に入りでした。

映画で影響を受けたのは「ブレードランナー」です。私たちの世代のクリエーターは皆影響を受けていると思います。当時、名古屋に住んでいたのですが、ロードショー公開が終わった後も、就職活動で東京に行った際に、わざわざ埼玉の2番館まで観に行ったりもしました。当然、絵コンテ集やコンセプト・デザイン集なども買って、今でも大切に取ってありますよ。

―学生にオススメの本または映画を教えてください

映画なら、やはり「ブレード・ランナー」、「スターウォーズ」あたりでしょうか。最近の作品なら「リアルスティール」や「カーズ」もお勧めです。この2つに共通しているのは、「世の中には勝ち負けよりももっと大事なことがあるよ」という事を教えてくれる点です。最近読んで面白かった本は、「マーベル映画究極批評 アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?」です。MCUの10年間を客観的に批評した内容で、面白いですよ。

北原 聡 先生(映像学部)

―学生へのメッセージをお願いします。

最近の学生は、へこたれるのが早すぎますね。「もうちょっと頑張れよ」って思います。私のゼミでは妥協を許さないので、作品制作の過程でとことんダメ出しするのですが、それに付いて来られない人が増えてきています。10年ぐらい前の学生は、なんだかんだ言って喰らい付いて来ていましたけどね。就職した後のことを考えても、今のうちに根性を付けておいてもらいたいです。しんどいときこそ頑張ってほしいです。それをクリアすることで初めて成長し、やっと達成感も得られるのに、その手前ですぐへこたれてしまう人が多い。

―先生がしんどかった時期はあるのでしょうか?

作品制作に関しては、しんどかった事は全くありません。人からはよく「大変そうだね」と言われますが、好きでやっているからしんどいと思った事は全然ないですね。何百枚も絵を描いたり、寝ずに作業をしたりしていても、辛いと思った事は一度もありません。

―最後に、北原先生の今後の活動の展開・展望を聞かせて下さい。

自由に作品を作りたいですね。教育現場に入ってきてからは、自分の作品を作る時間がほとんどないので、いつも「引退したら、思う存分作品作りてぇー!」って、心の中で叫んでいます。

――― ありがとうございました。

LSからの関連図書紹介

『CG world & digital video』、ボーンデジタル
『Autodesk Mayaトレーニングブック : 制作現場のプロが基礎から教える』、Bauhaus entertainment著 ボーンデジタル 2018.3
『「ブレードランナー」論序説』、加藤幹朗著  筑摩書房 2004.9
『ブレードランナーの未来世紀』、町山智浩著 2006.1
『スターウォーズ論』、河原一久著 NHK出版 2015.11