寄稿文

立命館大学図書館
開館120周年に寄せて

元立命館大学図書館長/立命館大学名誉教授
吉田 美喜夫

 2026年、「平井嘉一郎記念図書館」(以下「平井図書館」)が衣笠の地に誕生して10年となる。同時に、立命館大学に図書館が設けられて120年という年ともなる。

 平井図書館は、本学法学部の卒業生であるニチコンの創業者「平井嘉一郎」氏の遺志を受け継がれたご令室・平井信子様のご寄付を元に建設された。

 このご寄付をお願いに上がった2009年10月当時、私は図書館長を務めていた。今でも、ご快諾いただいた時のうれしさを思い出す。この嬉しさに支えられ、その後、建設を準備する委員会において平井図書館を形あるものにするための仕事をさせていただいた。

 ところで、図書館は単なる大きな書庫でも読書室でもない。では、どの様な図書館であるべきか。平井図書館の建物の構想と並行して、この問題の検討が進められた。その際、図書館関係者が、日本の大学だけでなく、アメリカ東部のハーバード大学など 6大学を訪れ、ラーニング・コモンズ(「学びの共有地」以下「LC」)という新しいコンセプトを学んできた。LCとは、学生が学ぶために出向いて、いろいろな知見を刈り取ってくる場所という意味である。これを受けて、図書館を「学びが見える、学びに触れる、学びあえる」場所とすることが構想されたのである。

 この構想は、大学における教育の在り方とも結びついている。LCのコンセプトは、衣笠キャンパス全体を「学びのコミュニティ」とする構想と共通しており、平井図書館は、学生が「自由に集い学びあう場所」である「学びのコミュニティ」の中核拠点と位置づけられたのである。このような構想を確定した政策文書が『衣笠キャンパスにおける「学びのコミュニティ」形成に向けて』(2010年3月17日)である。

  LCのコンセプトを形にするため、平井図書館には、静謐な空間だけでなく、討論する空間、憩う空間、カフェなどが配置されている。上の階に行くにつれ色調も落ち着けるように、そして多様な形式の椅子や机を配置して長時間滞在したくなる工夫も凝らされている。

  図書館は変化する存在である。書物が増えていくだけでなく、研究や教育の在り方の変化に対応していく必要がある。その時間的スパンは数十年を単位とすることになるであろう。平井図書館は、設計に当たり、長寿命型の図書館として常に時代の変化に応じ進化する建物となるための柔軟性が織り込まれている。

 私が図書館長だったとき、「大学には図書館がある。さあ、図書館へ行こう!」というメッセージを学生の皆さんに贈ったことがある。この思いは今も変わらない。平井図書館が、在学中だけでなく、卒業後も訪れて見たくなる場所であり続けてほしいと願っている。

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