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開催のごあいさつ

東京女子大学丸山眞男記念比較思想研究センターと立命館大学加藤周一現代思想研究センターは、2017年12月に研究提携協定を締結しました。この協定にもとづいて、これまで 毎年両研究センターによる共同展示を企画し、双方の大学キャンパスとウェブ上で同時に公開してまいりました。これは、両センターが保有する資料を利用した企画として立案し、研究成果として学生や市民に公開し、社会に還元することを目的としてきたものであります。

この共同展示の第1回は「君たちはこれからどう生きるか:丸山眞男と加藤周一から学ぶ」(2018年)、第2回は「〈おしゃべり〉からはじまる民主主義」(2019年)、第3回は「我を人と成せし者は映画:加藤も丸山も映画大好き!」(2020年)と題して公開しました。

今回は、丸山眞男と加藤周一の知的成長を跡づける2年連続の企画の後半部分にあたります。この企画は、丸山と加藤の出生から1945(昭和20)年までを対象として、二人が知識人として自己を形成した過程を明らかにしようとするものです。前半部分となる昨年の展示は、「知識人の自己形成:丸山眞男と加藤周一の出生から敗戦まで」と題し、二人が生まれ育った時代、家庭環境、友人や教師、読書、趣味などを包括的・時系列的に紹介しました。今回の展示は、同時代の同じ出来事が丸山と加藤にそれぞれどのような影響を与え、それを二人がどのように受け止め、そこから何を引き出したかということをテーマとしています。こうした構成により、同じ出来事を軸として二人を比較対照することを試みました。

最初に取り上げるのは、1923(大正12)年に発生した関東大震災です。この震災によって二人が住んだ東京が焦土となったことは、ひきつづいて発生した朝鮮人虐殺事件や甘粕事件などと合わせて、大きな衝撃をもたらしました。その後、東京はモダン都市空間として再生しますが、1931(昭和6)年の満洲事変を機に、日本は十五年戦争と呼ばれる時代に突入していきます。今回の展示では、軍部の台頭を加速させた1936(昭和11)年の二・二六事件と、1941(昭和16)年の太平洋戦争開戦を中心として、丸山と加藤の反応を紹介します。そして最後に、二人が敗戦の体験をどう意味づけていったかを扱います。

丸山と加藤の体験は一回限りのものであり、現代に生きる私たちがそのまま再現できるわけではありません。しかし、同じ出来事に直面しても、二人の間の年齢や関心の違いによって、それぞれの受け止め方は異なるものとなりました。そしてそれもかかわらず、両者は知識人としての特質を共有しています。このことは、さまざまに異なる体験からも共通の意味を引き出しうること、丸山と加藤が経験したような知的成長は決して特定の時代においてのみ可能になったわけではないことを示しています。丸山と加藤が知識人として自己を形成していった過程を明らかにしようとする本展示が、知性の成長という事柄に関して考える一助となれば幸いです。

なお、今回は昨今のコロナ禍を考慮してウェブ上の展示を中心とし、会場では縮約版をパネルで展示することといたしました。

2023年3月31日
東京女子大学丸山眞男記念比較思想研究センター長
 和田博文
立命館大学加藤周一現代思想研究センター長
 加國尚志

加藤周一文庫について

加藤周一文庫は、2010年に加藤の御遺族から寄贈された書籍・雑誌類と手稿ノート・資料類とを所蔵しています。立命館関係者だけではなく、一定の手続きをしていただければ、広く市民も閲覧することができます。

〔書籍・雑誌類〕蔵書数は約20,000点に上ります。そのうち約12,000点は開架式閲覧室にて、自由に閲覧、その一部は貸出を受けることもできます。約8,000点は閉架式書庫にて収蔵、一定の条件がありますが、請求によって閲覧が可能です(貸出不可)。開架式の蔵書は3つのグループに分けられます。①加藤の著書と加藤の著作が載る書籍・雑誌。②加藤について書かれた書籍・雑誌。③加藤が所蔵し利用した参考書籍・雑誌類。①②については、完全に揃っていることが望ましく、現在も補充作業を続けております。

〔手稿ノート・資料類〕「手稿ノート」、来信、写真、手帳、新聞切り抜き、地図などの資料類を収めています。「手稿ノート」の総頁数は10,000頁を超え、大半は加藤自身によって主題別にファイリングされ、一部は加藤周一研究センターのスタッフがファイリングしました(ファイル数は1,000超。両者は区別されています)。これらの「手稿ノート」は主として執筆のために取られ、加藤の著作や思想を精しく研究するためには、欠かすことができない重要な資料です。その他の資料類はまだ整理が終わっていません。

〔デジタルアーカイブ〕「手稿ノート」は、管理保存上、現物をお見せすることができません。そこで「手稿ノート」のデジタルアーカイブ化を進め、インターネット上で公開しています。このアーカイブは「キーワード」検索の機能をもっています。すでに公開されたノートは2023年3月現在、『青春ノート』、《Journal Intime》(1948年~51年の日記)、日本文学史関連のノート、『Notes on Arts』『1968 1969』『詩作ノート』など43冊にのぼり、今後も公開するノートを増やして参る所存です。

加藤周一の研究と精神とを引き継ぐために、加藤周一文庫が少しでも資するよう、一層の努力を傾けて参ります。

立命館大学図書館長
 重森 臣広
(立命館大学教授)

丸山眞男文庫について

丸山眞男文庫は、東京女子大学の図書館内にあります。 20世紀を代表する知識人の一人、丸山眞男(まるやま・まさお、1914~1996)が遺した蔵書や様々の草稿などを所蔵しています。これは、1998年9月に、丸山家から東京女子大学に寄贈されたものです(2011年には、丸山の著作の一切の著作権も遺贈されました)

所蔵資料の内容は、約18,000冊の図書(その内、約5,800冊には、丸山自身による書き込みがあります)、約6,200件の草稿類、約18,000冊の雑誌、そして丸山に宛てられた書簡類(段ボール26箱分)などです。さらに、丸山が深くかかわった「平和問題談話会」関係資料(吉野源三郎の整理による)も、岩波書店から寄贈され、丸山文庫の所蔵となっています。まさに、丸山の学問と思想の全体像を知ることができる網羅的な構成です。

丸山眞男文庫は、所蔵資料の調査・整理を続け、まず2005年に、書き込みなどの無い図書を、開架図書として東京女子大学図書館内で公開しました。ついで、草稿類(2009年)、閉架図書(2010年)、雑誌(2012年)、楽譜類(2014~2015年)を、順次公開してきました。

この内、図書は、インターネット上に表現した「丸山眞男文庫バーチャル書庫」(2015年公開)によって、丸山宅での配架の様子を閲覧できるようになりました。閲覧すると、まるで、東京女子大学のすぐ近所にあった丸山の書斎にもぐりこんで、本棚を眺めているような気分になります。また、草稿類は、「丸山眞男文庫草稿類デジタルアーカイブ」(2015年公開)によって、文庫を訪れなくとも、インターネット上で閲覧できるようになりました。

丸山に宛てられた膨大な数の書簡などについては、現在、なお調査中です。

本文庫がさらに多くの方に利用され、丸山眞男の学問と思想を今後に活かしていくことに貢献できるよう、今後も努力してまいります。

丸山眞男文庫顧問
 渡辺 浩
(東京大学名誉教授・日本学士院会員)