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メッセージ

牧田 正裕 教授

専門分野:経営学(サービスマネジメント、観光マネジメント、コーポレートガバナンス)、会計学

「暮らすように旅する」時代の観光マネジメント

観光に携わる人たちの営みは、ほとんどは「ビジネス」(事業)として行われています。すなわち、観光に携わる人たちの多くは、旅行者からお金をいただいて、何らかの「コト」(事)を提供することを「ナリワイ」(業)としています。かつては、難しいことを考えずに、男性の団体に対して、宴会場と大浴場が用意されていれば許される時代がありました。旅行会社のいうことを聞いていればお客さんが来てくれる、そんな時代がありました。ところが、旅のスタイルは多様化するなど、大きく変わってきました。旅のスタイルが変われば、ビジネスさらにはマネジメントのあり方もそれに適応させ、変えていく必要があります。本講座では、観光をめぐるこうした変化を明らかにしつつ、観光事業のマネジメントに関する諸課題とそれらを解決していくためのヒントを、受け入れる地域(ディスティネーション)および企業・事業者それぞれについて考えていきます。

ところで、旅のスタイルが変わったけど、私たちの地域には「何もない」という声をよく聞きます。いや、そんなことはぜったいありません。地域資源にフォーカスし、「らしさ」として顕在化させていくことで、道を拓くことが可能なのです。そして、そのような取り組みを「まちづくり」として展開することで、「住んでよし・訪れてよし」のディスティネーションへと創り育てていった地域が日本にはたくさんあります。

他方、事業者の皆さん、今まで当たり前のようにやってきたことを考え直してみませんか。例えば、いわゆる「おもてなし」ひとつとってみても、一般家庭でもタダ(無料)で客人を「もてなす」ことができるように、それがあなたのビジネスの「らしさ」として、付加価値を生み出しているとは限らないのです。それよりも大切なのは、誰にどのような価値を提供するのか、従業員の顧客接点での対応のあり方を含めて「デザイン」することです。しかも、経営者その他マネジャーは、顧客接点で何が行われているのか――これを「真実の瞬間」と言います――を目撃することができない前提の下で、サービスやホスピタリティのデザインを実行していかなければならないのです。

さあ、どうすべきか、一緒に考えていきましょう。