文化人類学を学び、海外を体験した学生時代
幼い頃から外国に興味があった私の夢は、世界中を旅行すること。小学生の時、叔父の家の本棚で文化人類学者・中根千枝先生の著作を見つけ、「世界各地でフィールドワークをする学問があるんだ」と知ったことが、文化人類学に関心を持った最初でした。しかし当時の私にとって研究者になることはもちろん、女性が社会で働き続けることすら当たり前ではありませんでした。人類学科のある地元の大学を志望した時、「女子なのに短大に行かないのか」と進路指導の先生に驚かれたほどです。
「外国に行って、いろんなことを知りたい」という思いが叶ったのは、3回生の夏休み。インドネシア文化を研究する先生がインドネシアでのフィールドワークをお膳立てしてくださったのです。初めて海を渡り、数人の学生とバリ島の山奥にあるテンガナンという村で2週間を過ごしました。水道はなく、食事もあまり衛生的とは思えなかったけれど、地域の祭りを見学したり、現地の暮らしに触れたりするのは楽しかったですね。中には馴染めない学生もいましたが、「私はどこでも生活できそう」と変な (?)自信を得て日本に帰ってきました。
4回生で1年間、アメリカのイリノイ州立大学に留学。日本で学芸員の資格取得課程を履修していた私は、週末にシカゴの博物館を訪れるのが楽しみの一つでした。当時まだ日本にはなかった、体験したり、触れたりできるユニークな展示を見て、「楽しみながら学べる博物館がある」と知り、博物館への興味が膨らみました。
文化人類学を学び、海外も体験しましたが、当時は大学院へ進学することまでは考えていませんでした。研究の道に目が開かれたのは、卒業後に4年間、地元の女子短大に職員として勤務した時です。ここで多くの女性の研究者の先生方と出会い、初めて「研究者」、「大学教員」という選択肢を自分のこととして身近に感じました。