ジェンダーの平等に男性がどう貢献できるか
私は、立命館大学法学部卒業後、大学院社会学研究科で社会病理学を専攻しました。1980年代、社会科学の中にジェンダーの視点が入ってきた頃です。
ジェンダーといえば、女性側が差別や暴力の被害を受けている現状からどう権利回復していくかという見方が主流だったのですが、私は男性としてジェンダーの平等にどう貢献できるかを考え、「男性の暴力」というテーマに行きつきました。性犯罪、DV、深刻なストーカー、これらの多くは男性の暴力です。もちろん男性と男性の暴力も問題です。自殺やひきこもりも男性が多いのですが、これは暴力が自分に向けられた結果です。世の中を平和にするには、男性性に焦点を当てた社会病理の研究が必要ではないかと考えたのです。
以来、出所者の社会復帰支援、少年刑務所での性犯罪者の再犯防止支援、対人暴力のある人への脱暴力支援など、さまざまな現場に関わることによって個人への臨床的アプローチを実践すると同時に、法律によってきちんと犯罪化するため、DV防止法やストーキング規制法などの法整備や先の刑法改正に際して提案すること等を通して、社会へのアプローチも続けています。
法学部から社会学研究科に進み、産業社会学部の教員になり、今は人間科学研究科で臨床心理学や司法に関わる対人援助学のようなことも扱っている私は、学問分野ではなく、社会課題を中心に研究課題を作ってきました。解決すべきこと、必要とされていることがあるなら、学問領域は後から自分で作っていく。そんな姿勢でやってきたつもりです。