食マネジメント学部 准教授 (インタビュー当時)

小沢 道紀

立命館大学経営学部卒業、同大学大学院博士課程前期課程修了、同大学大学院博士課程後期課程中退。2001年、経営学部専任講師に就任。その後、2010年、スポーツ健康科学部、2018年には食マネジメント学部に移籍。

フィールドに赴き、地域と関り持続可能な地域づくりを考える

#16

自分で考え、探究する大学で知った学びの楽しさ

高校までは暗記中心の勉強が好きになれず、自ら研究する道へ進むとは考えてもみませんでした。経営学部を選んだのは、大学進学を目指して浪人中、スーパーマーケットでアルバイトを経験してモノを売るおもしろさを実感し、経営に関心を持ったから。大学に入学し、自分で考え、探究していく学びのおもしろさを初めて実感しました。
私が大学時代を過ごしたのは、バブル経済が崩壊して数年後。社会でデフレが進む中で「どうしたらビジネスがうまくいくのか」を考えながら、主に流通を学びました。そして、サービス産業の経営課題やマーケティングについてより深く知りたいと思い、大学院に進学。当時、大学院には同世代の学生だけでなく社会人学生も学んでおり、年齢や経歴の異なる人と議論し、たくさんの刺激を受けたことを覚えています。
修士課程でサービス産業を取り巻く経営課題を大きなテーマとして研究する中で、ホスピタリティ産業にも関心が広がり、観光資源などの販売についても研究するようになりました。それが現在取り組む持続的な地域づくりについての研究や取り組みにつながっています。

フィールドを重視し地域活性化に取り組む

研究にあたって一貫して重視してきたのは、机上の研究に留まらず、フィールドに赴き、実社会の課題に触れてそれを解決する具体策を考え、実践すること。実際に自治体や企業から経営課題を聞き、協働で解決に取り組むことも少なくありません。立命館大学スポーツ健康科学部に赴任した当時、Jリーグのチームの一つと協働で女性ファンが増加した原因を調査。検証結果がメディアに取り上げられたりもして、研究を実社会に役立てる意義とやりがいを実感しました。
少子高齢化が進展し、全国各地に過疎地域が増える中、現在は、熊本県や草津市、甲賀市など地方自治体から依頼を受け、住民や地元企業と一緒に地域を元気づけることに取り組んでいます。こうした実社会の課題に対し、実効性の可能性の高い解決策を導き出すためには、一つの分野の専門知識だけでは不十分です。高い専門性を持ちつつも、多様な学術分野についての素養、多角的な視点で捉える力、立場や考え方の異なる人をつなげる力が求められると感じています。
2018(平成30)年、本学に新設された食マネジメント学部の設置に関わるようになってから改めて、地域に活力をもたらすコンテンツの一つとして「食」の価値にも注目するようになりました。全国のどんな地域にも魅力ある「食」があるにもかかわらず、住民がそのすばらしさに気づいていないことが少なくありません。こうした地域に根差した魅力的な「食」を地域活性化に生かすとともに、地域の一次産業も後押しする手立てを見出し、実践につなげていきたいと考えています。

研究とともに教育にも注力。学生の成長が嬉しい

社会のさまざま事象を捉え、自分自身でその原因や意味を考える。自らの関心をトコトン追求できるのが、研究のおもしろいところです。一方で、研究と同じくらい情熱を注いでいるのが、教育です。実際に、現在課題だと考えていることを現場で解決していくのは、将来を担う学生たちです。そのため、毎回の授業に工夫を重ねることはもちろん、150名を超える受講生一人ひとりにコミュニケーションペーパーで詳細なコメントを返信し、学生に応える授業づくりを心がけています。また教育の一環として、地域活性化のフィールドワークにも学生たちを参加させています。社会の人々と触れることが、学生の学びと成長につながっていきます。
研究者を志すか否かに関わりなく、学生には常に「たとえ教師の言うことでも『違うんじゃないか』と疑問を持ち、その答えを自分自身で探してほしい」と指導しています。初めて教鞭をとってから約20年が過ぎ、起業したり、社会で重要な地位や仕事に就いてがんばっている教え子の近況を知ると、自分のことのように嬉しく思います。
今後も教育とともに、日本の各地域の維持・発展に寄与する研究・実践を継続していくつもりです。こうした取り組みが目に見える成果を挙げるには長い時間を要します。長期的な視点で、持続可能な地域づくりに役立ちたいと考えています。