「消去法」の結果から始まった研究者人生
高校1年生まではどちらかというと国語が得意だった私が理系を選んだのは、「ちょっと格好良さそう」という軽い気持ちからでした。大学では工学部の中でも建築系を専攻。正直に言うと、コンクリートの研究との出会いは、「消去法」の結果でした。4回生で研究室を選ぶ時、建築分野の中でデザインや環境にはあまり興味を持てず、かといって構造は計算が多くて苦手意識があり、選びあぐねた末に、恩師となる谷川恭雄先生や小説家としても名を馳せていた森博嗣先生に惹かれ、行き着いたのが、建築材料の研究室でした。
退官が決まっていた谷川先生の勧めもあって、卒業後は東京大学の大学院に進学。そこでコンクリート中の鉄筋腐食に関する研究をスタートさせます。それは、長い暗中模索の日々の始まりでもありました。
大学院、特に博士後期課程では、自分でテーマや手法を決め、自力で研究を進めていかなければなりません。自分自身の興味を深く掘り下げた経験のなかった私は、何に着目し、どのように研究に取り組めばいいのか確信が持てず、何年も悩むことになりました。