豪国・欧州、米国へ
グローバルに知見・経験を得る
日本人の両親の下、アメリカで育った私は、幼い頃から自分のアイデンティティについて考えることが多く、「自己とは何か」といった問いから、自然と哲学に興味を引かれるようになりました。
大学時代に留学したオーストラリアのモナシュ大学で哲学の面白さを知り、卒業論文では近代日本で活躍した哲学者・西田幾多郎について研究。卒業後は、日本哲学の研究で知られる京都大学大学院に進学しました。父親が物理学者で、漠然と「私もいつか研究者になりたい」と思っていたので、進学することに迷いはありませんでした。博士課程では、日本哲学と西洋哲学との比較研究をしたいと考え、見つけたのが、現象学で名高いデンマークのコペンハーゲン大学でした。3年間、同大学の主観性研究センターで、西田幾多郎とハイデガーの比較研究を行いました。
その後は縁あってアメリカのプリンストン高等研究所に誘っていただき、学際的研究プログラムの招聘研究員として赴任。AIやロボティクス、心理学など幅広い分野の研究者と一緒に研究する機会を得ました。今でも忘れられないのは、初めて皆を前に自分の研究を説明した時、うまく伝えられなかったことです。もともと「自分とは何か」という普遍的な問いから哲学を志したのに、専門性を追究する中で、いつしか専門家以外には理解できないことを研究するようになっていたと気づき、ショックを受けました。「これは私の目指すところではない」。そう思ってからは、以前にも増して多分野の人と関わるようになりました。それが現在の研究につながっています。