スポーツ健康科学部 助教

前大 純朗

2009年、鹿屋体育大学を卒業。2014年、同大学博士課程を修了後、日本学術振興会特別研究員として、オーストラリアのエディスコーワン大学、早稲田大学スポーツ科学学術院、さらにイギリスのラフバラ大学で研究員として研究に従事する。2019年、立命館大学総合科学技術研究機構専門研究員/海外派遣フェローに就任。2021年、スポーツ健康科学部助教に就任。

好きなことをとことん追求する。その楽しさを恩師に教わった。

#37

みるみる身体が変化する
筋トレにハマり、研究の道へ

小学校から高校まで野球をしていましたが、怪我の多さが悩みの種でした。それを改善するため、練習に筋力トレーニングを取り入れたところ、みるみる身体が変わっていくことを実感。それが、筋トレにハマったきっかけでした。
筋トレと英語を学びたくて、留学制度の整っている鹿屋体育大学に進学したものの、当時は大学院に進学することも、ましてや研究者になることも考えていませんでした。進路を決める契機になったのは、「トレーニング科学」の授業を担当していた山本正嘉先生との出会いでした。講義内容はもちろん、それ以上に心を動かされたのは、本当に楽しそうにご自身の研究について話される先生の姿です。「自分の好きなことをとことん追求する」楽しさを先生から学び、「格好いいな」と思いました。登山愛好家でもある先生に誘っていただいて、富士山登山中の心拍数や血中酸素飽和度などを測定する実験に参加し、研究の面白さに触れたことが決定打になり、大学院進学を決めました。

日本学術振興会の助成を受け
豪州・早稲田・英国へ

大学院時代から一貫して関心を持っているのは、身体運動に対する生理応答および長期的適応です。筋トレ中の姿勢(筋肉の伸ばされ具合)、有酸素運動との組み合わせや食事のタイミングなど、多様な要因でトレーニング効果は変わります。どのようなトレーニングをすれば、効率的かつ効果的に筋力を向上させられるのか。実際に人を対象にトレーニング実験を実施して効果を検証するとともに、そのメカニズムを解明しようとしています。
修士課程では、大学の恩師・山本先生に紹介していただき、トレーニング科学の分野で世界的にも著名な金久博昭先生の下で、筋トレの研究に勤しみました。恩師や仲間など、人に恵まれたことも、研究を続ける大きな原動力になったと思っています。
研究者としてキャリアを切り開く上で最も重要なのは、確かな研究成果を出し続けることです。そうした研究の蓄積が最初に評価されたのは、博士課程に在学中、日本学術振興会の特別研究員DC(博士課程在学者)に採用されたことでした。それまで5年間、学業の傍ら塾講師などのアルバイトを続けていましたが、研究奨励費を受けられるようになったことで、研究に打ち込めるように。その頃から、国際的な学術誌にも論文が掲載されるようになり、さらに研究に拍車がかかりました。
博士課程修了後も日本学術振興会特別研究員PD(博士学位取得者)に採用され、支援を受けて、オーストラリアのエディスコーワン大学、早稲田大学、イギリスのラフバラ大学で合計4年間にわたって研究しました。この分野で先進的な実績を挙げる大学で研鑽を積み、国内外の多くの研究者と出会えたことが、現在にも活きています。

1日のスケジュール(取材時)

ライフライン・チャート

  • A

    19歳(大学生)
    筋トレと英語に興味があったため、留学制度のある国立の体育大学に進学し、1年生時にカナダに約1年間留学した。苦労したが、充実していた。

  • B

    27歳(博士課程)
    辛い時期もあったが、良い先生や仲間に恵まれ、筋トレに関する研究に励んだ。日本学術振興会の特別研究員DCに採用され、研究成果も国際学術誌に掲載されるようになった。

  • C

    29歳(研究員)
    日本学術振興会の特別研究員PDとして、オーストラリア、関東、イギリスの大学で研究を行った。同郷の妻と結婚した。

  • D

    32歳(研究員)
    3月中旬に息子が生まれ、その翌週に自身の脊柱管狭窄症の手術をし(2週間の入院を1週間に短縮)、その翌週には立命館大学に着任と慌ただしかった。

  • E

    39歳(助教)
    指導する学生や依頼される仕事も増えてきた中、娘が生まれた。睡眠不足の日々が続くが、娘の行動の一つ一つに日々癒されている。

立命館大学の充実した研究環境で
スポーツ科学を探究

イギリスから帰国後、以前から学会で会うたびに声をかけてくださっていた立命館大学スポーツ健康科学部の伊坂 忠夫教授の招きを受け、立命館大学グローバルイノベーション研究機構の専門研究員として赴任しました。立命館大学には、MRIをはじめとした先進の計測機器が充実し、スポーツ科学について研究する上で、魅力的な環境が整っています。現在は、MRIなどを用い、筋トレの効果をより詳細に解析しています。
助教となった今は、研究だけでなく、大学教員として仕事をすることも増えてきました。プライベートでは、子育ての真っ最中。仕事とバランスを取るのは容易ではありませんが、割り切って時間を区切り、仕事を切り上げるようにしています。
また学生への指導も、新たなやりがいになっています。私自身が学生時代、多くの先生・先輩方に背中を押してもらったからこそ、今があります。今度は私が支える立場だと思い、研究指導や国際学会への参加も後押ししています。
社会で仕事をする上では、苦しいことや好きでないことをしなければならない時もあります。それも含めて、いかに自分が楽しむかが、大切です。私自身も、まだまだ研究が楽しくて仕方ありません。大学時代に抱いた筋トレや研究への情熱は、いまなお衰えることなく燃え続けています。