SF小説が現実のものになったら?そんな空想を膨らませたことはないでしょうか。実際にSFは、フィクションでありながら、現実の科学技術と影響を及ぼし合い、歴史的背景や社会的文脈に埋め込まれています。
SFは、未来を想像するための方法とは限らず、構想された未来を通し、現実を新たな視点から考えなおす方法でもあります。文学と科学技術を結合させるハイブリッドなジャンルとしてのSFこそ、科学技術の発展が我々の生活にどのように組み入れられているかを検討する際に重要な役割を果たします。
この研究は、カルチュラル・スタディーズの観点から、文芸評論だけでなく科学哲学や科学技術論社会論の知見を関連させて、領域横断的な方法に基づく考察を行っています。21世紀においてはこのような文理横断的な考察が必要不可欠です。具体的には、原子レベルから物質の性質・機能をデザインして産業に活かすナノテクノロジーを中心に、ナノテクノロジーを巡る科学言説とフィクションの中に現れるナノテクノロジーの表象を照らし合わせ、そこから科学言説がもたらす世界観と、先端科学技術による社会的影響がSFにおいてどのように捉えられているかを探っています。