今、世界をあげて地球温暖化対策に取り組んでいます。しかし、この対策が思いがけないところに悪影響をおよぼすことがあります。例えば、今のエネルギーに変えてバイオエネルギーを活用しようとすると、バイオエネルギーの原料となる作物を育てるために広大な土地や水が必要となります。そうなると食料に回す分が減り、食料価格が上昇し、飢餓リスクが高まるのです。
食料安全保障に考慮せず、温室効果ガスの削減策を実施すれば、2050年時点で食料消費量が世界全体平均で5%低くなり、飢餓にさらされる人が7800万人も多くなる、という推計が出ました。反対に飢餓をゼロにするために、食料生産量を増やせば、今度は温室効果ガスの排出量も増大してしまう、という結果も出ています。
そこで、温室効果ガスの削減については、どの国も一律に同じ削減策をするのではなく、柔軟な政策が必要です。食料が不足しているインドや南アジア、アフリカなどの負担を軽くし、食料支援を行います。先進国では、食べ過ぎや食品ロスを減らします。国際的な議論を重ね、協力して環境を守りつつ、飢餓対策も行っていく方法を考えていかなければなりません。