RPG(ロールプレイングゲーム)やファンタジー映画、マンガやアニメなどにしばしば「アーサー王」という名前が登場します。アーサーは5世紀末からブリテン島で語り継がれてきた伝説上の人物です。アーサー王物語は12世紀に記述されると、またたくまにヨーロッパ全域に広がり、読み継がれてきました。日本でも明治時代、夏目漱石が書いた「薤露行」に登場しています。広がるにつれてさまざまな尾ひれがつき、たくさんのスピンオフが作られています。アーサーを女性とするゲームもあります。
いったいなぜ、アーサー王物語は時空を超え、今も人々をひきつけているのでしょうか。その最大の魅力は「歴史とロマンス」であるといえます。アーサー王物語は古代ケルトに伝わる歴史を元にしながら戦や冒険、恋愛、魔術、神秘といったファンタジーの要素を取り入れています。大きな共同体の運命が、歴史の一瞬に生きている人間の小さな存在によって動かされたり、またその逆だったり、ということが人々の心を揺さぶるのです。「歴史とロマンス」の絶妙なバランスが魅力のアーサー物語は、これからも現代のさまざまなサブカルチャーに影響を与え続けていくことでしょう。