みなさんは、立命館大学に
遊びを通して子どもたちの
成長や発達を支える場が
あること知っていますか?

Outline

創思館トレーニングルーム1見取り図
創思館トレーニングルーム1アクセス
Data
名称:
トレーニングルーム1
場所:
衣笠キャンパス
創思館
主な利用者:
人間科学研究所の研究者など
設置年:
2001年

Secrets

トレーニングルーム1
何をする場所?

トレーニングルーム1の室内には、キッチンやダイニング、トイレやお風呂、和室、控え室やミーティングルームなどの設備が整っていて、身体に障がいのある方の生活訓練施設として利用されています。その他にも応用人間科学研究科で療育や子どもの発達を勉強するみなさんが、自閉症スペクトラムの子どもたちの療育活動を行う場として月に1回使用しています。

トレーニングルーム1
自閉症スペクトラムとは?

自閉症スペクトラムの障がいには、①社会性(日常生活の暗黙のルールなど)、②コミュニケーション能力(ことばの理解ややりとり)、③想像性(こだわりや関心のあることへの熱中、予想外のことが起こったときの戸惑いや混乱)、④感覚の敏感性(音や触覚など知覚の過敏さ)があげられます。

トレーニングルーム1
療育活動って?

自閉症スペクトラムの障がいの例として、人間関係が上手く築けない、一人遊びが好き、一人ぼっちになりやすく、いじめやからかいの対象になりやすいという特徴がみられることがあります。そこで、友だちづくりの場を提供し、“自分の思い"を積極的に出して、思いっきり楽しめる「遊び」や「場所」を提供しています。

トレーニングルーム1
どんな研究なの?

遊びを主とした療育プログラムの開発を行っています。子どもたちと実際に遊びを“実践"して“理論化"し、またそれを検証します。子どもたちの年代によって遊びに求めるものは異なるので、幼児期から青年期にかけて一貫したプログラムや長期的な成果が求められます。今後の課題としては、人生のどこかで自閉症スペクトラムの診断を受けた子どもたちが遊びを通して築いてきた友だち関係や力を、学校や社会の中でどのように発揮してくれるかを研究していくことです。

Activities

具体的にどんな活動をするの?

活動に参加している子どもたちは幼児〜高校生と幅広い年齢層です。
それぞれがAグループ(中学生〜高校生)、Bグループ(小学校高学年〜中学生)、
Cグループ(小学校低学年)、Dグループ(診断のついていない子どもたちで幼稚園の年中〜年長)
に分かれて活動しています。

「ポックリ」を使ったボール遊び
Aグループ
中学生〜高校生

メインプログラムでは、「ルール遊び」をしています。遊びの提案はスタッフが行いますが、具体的なルールづくりは子どもたちの主体性に任せています。この目的は、他の子どもたちと話し合いルールをつくることで、相談する力を身に付けることです。最近では、「ポックリ」を使ったボール遊びをしました。この遊びの特徴は、体力的に差のある大人と子どもたちが対等に競えるように工夫しているところにあります。

Bグループ
小学校高学年生〜中学生

メインプログラムでは、物語の登場人物になりきる「ごっこ遊び」をしています。これまでに、海賊になりきって宝物探しをする遊びをしました。スタッフのみなさんは、子どもたちが物語の世界観をつくりやすくするため、わかりやすい流れのストーリーを考えたり、目的をもって取り組めるプログラムを考えるなど、工夫を凝らしています。

Cグループ
小学校低学年生

メインプログラムでは、素材を使った「ごっこ遊び」や「ふり遊び」をしています。自分がなりきるというよりは、“きのこ狩りにいく遊び"など、偽物を本物に見立てる遊びです。このグループでの遊びの特徴は、みんなで遊ぶことが苦手な子どもがいた場合、反応や要求に応じて一人でできる遊びも用意しているところです。

Dグループ
幼児(幼稚園の年中〜年長)

メインプログラムでは、「ふり遊び」を行っています。このグループでは、スタッフや友だちと一緒に遊ぶ中で、活動や環境に慣れることを大切にしています。例えば、教室に隠された偽物の果物をみんなで探し、偽物のケーキをつくります。食べるふりや飲むまねの遊びを通じて、模倣を繰り返すことでイメージを膨らませます。

Others

トレーニングルーム2
トレーニングルーム2

トレーニングルーム1と同様に活動のメインとして使われている教室です。子どもたちがごっこ遊びやルール遊びをするときに利用しています。

トレーニングルーム3
トレーニングルーム3

教室内には棚が設置されており、子どもたちが活動中に使っている遊び道具や読書のための本が収納されています。

Voices

松元 佑さん
松元 佑 さん
(社会学研究科博士後期課程2回生)コーディネータ

私は、この活動に6年前から参加し、2年前からコーディネータをしています。スタッフとしては、一から遊びを考えることに大変さを感じていましたが、子どもたちが「また来たい!」と言ってくれたことが嬉しかったですね。コーディネータの仕事では、スタッフの時には関わることができなかった保護者の方々と関わることができ、"親の気持ち" を知る機会が増えました。子どもたちの成長や発達をみることがやりがいに繋がっています。

富井 奈菜実 さん
富井 奈菜実 さん
(社会学研究科博士後期課程1回生)アドバイザー

私は、学部生の頃からこの活動に参加していました。「子どもたちみんなにとって楽しい遊び」を目指して、プログラムの作成を行っていました。現在では、その経験を活かし、アドバイザーとしてスタッフの考えた企画やプログラムの内容に関して助言をしています。スタッフの頃は子どもをメインに考えることが多かったのですが、アドバイザーとなった今ではスタッフや保護者の立場で物事を見ることができるようになりました。

荒木 穂積 先生
荒木 穂積 先生
(産業社会学部/応用人間科学研究科・発達心理学)

人間発達と発達保障の理論と実践研究の一環として、自閉症スペクトラムの療育プログラムの開発研究を行っています。自閉症の子どもたちが持つ特性に積極的に働きかけ、遊びという楽しい活動で自閉症の特性を和らげることができれば、と考えています。臨床研究は、何かを発見したり、発明したりするだけで終わるのではなく、人の一生を研究していかなくてはならない、息の長い研究です。だからこそ、スタッフや支援者の方々の協力が必要不可欠です。また、“誰のために"研究をしているのかが目に見える研究であるからこそ面白いと感じます。子どもたちの未来を拓けたものにするために、私たちの研究はあると思います。

竹内 謙彰 先生
竹内 謙彰 先生
(産業社会学部/応用人間科学研究科・発達心理学)

立命館大学に来た2007年から、自閉症スペクトラム児の療育活動に参加しています。ここでの療育活動の基本は「遊び」です。遊びだからこそ許されることがあり、遊びだからこそ子どもたちは楽しく過ごす中で得るものがあると考えて、プログラムを更新してきています。遊びの療育活動をつくるのは、とても創造的な活動だと思います。それを研究成果としてまとめる作業は大変ではありますが、やりがいがあるものでもあります。

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