THE INFLUENTIAL READS⽴命館⻄園寺塾で「出会えてよかった1冊」
8期⽣岡田 健一さんの
「出会えてよかった1冊」
禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン
この本と出会ったことで、「幸せとは何か」という問いへの自分なりの暫定解を、それまでの文学的・抽象的な概念にとどまっていた状態からある程度に言語化・図化する状態まで昇華できた。それが、数多い西園寺塾で出会った中からの一冊として選んだ理由である。
部分が全体の相似形であるというフラクタルは広い科学分野に適用されており、この本はそれを金融市場に適用したものと予断してしまうが、その印象は半分正しく半分間違っていた。意外にもフラクタル自体、マンデルブロが金融市場を研究する中で生まれたものであり、自然科学者として名高い当人も「経済学者」と呼ばれることを選んでいることが教え子である訳者のあとがきから分かる。
本書では金融市場のリスク(バブルの発生や崩壊)は予想できず、予想できるのはボラティリティ(変動の幅)だけであるとフラクタルを通じて解説している。要は、不確実性自体は予想できず、予想できるのは不確実性の変動幅ということである。本書で最も重要なこの点が私にある示唆を与えた。
人の幸不幸は予想できない。予想できるのはボラティリティだけである。どれだけ恵まれた環境にあっても、戦争や自然災害、ケガや家族の死などさっきまでの平穏や幸福が嘘だったかのように一夜にしてどん底に叩き落されることが人生にはある。だからこそ教育・文化等によりボラティリティを緩和し、生活において日頃(関係性)が大事であり、何よりもどん底に陥っても再起できること、即ち不幸を終着地にしないことこそが幸せといえるのではないか。そんな発見をこの本はくれた(フラクタル理論は他の分野に相似形を適用したくなる何かをもっているのだろうか)。
2024年12月17日
この本を選んだのは…
8期⽣ 岡田 健一さん OKADA Kenichi
アミタ株式会社 代表取締役社長
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