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専門演習Ⅰ:特別講義 「スポーツNPOを20年続けることができたわけ」

2026年6月4日の専門演習Ⅰでは、NPO法人アダプティブワールド理事長の齊藤直氏を講師にお迎えし、「スポーツNPOを20年続けることができたわけ」をテーマに特別講義を実施しました。

アダプティブワールドは、先駆的に障がいがある子どもたちのためにスポーツ活動を提供してきたプロフェッショナルな集団です。講義では、スポーツを「教える」ことだけではなく、活動を継続するための条件や仕組みづくりについて、実践経験に基づき、お話しいただきました。

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齊藤氏はまず、「『いい活動』を死なせないために…」という言葉を紹介されました。スポーツを事業化するためには、単にスポーツ指導を行うことではなく、子どもたちに「できた!」という成功体験を積み重ねる場をつくる必要があると説明されました。その上で、スポーツ活動を成立させるためには、種目の指導だけでなく、「どうすれば参加できるのか」という環境整備、「どんな環境なら挑戦できるのか」という余白づくり、「誰がどう支えれば安全なのか」という仕組みづくりが必要であり、目に見えない準備こそが重要であると強調されました。とりわけ、NPOの活動を進める上で、重要な鍵を握る「お金」の問題についても率直に語られ、齊藤氏は、「NPO=ボランティア」という考え方は幻想であり、活動を継続するためには、安全管理、保険、専門指導者の人件費、用具の調達やメンテナンス、活動場所の維持費など、多くのコストが必要であると説明されました。そして、「お金の話をすることは冷たいことではなく、活動を続ける責任である」と述べられ、持続可能性を考える重要性を学生たちに問いかけられました。


特に印象的だったのは、2010年の法人存続危機に関するお話です。民主党政権時の事業仕分けによりNPO向け助成金が大幅に削減され、法人を解散させなければならないような危機に直面されたようです。その際、寄付金を集めるなど、奔走されたのですが、結果的には、参加費の大幅な値上げを決断せざるを得なかったとのことでした。その時に、値段を上げてもいいから、せっかく、子どもたちが輝ける場に恵まれたのに、その場を存続させてほしいという声が大きくなり、「スポーツ活動=廉価な参加費」という価値観を捨てて、活動の価値や本質に見合った受益者負担を求めるように発想の転換を図ったとのことでした。

齊藤氏は、このような経験を通じて、「想い」を「事業」という仕組みに変える必要性を痛感したと語られました。助成金だけに依存するのではなく、参加費、行政や学校からの委託事業、企業協賛、寄付金など、複数の収入源を組み合わせることで、収入構造の多元化を図ったそうです。その際、「誰の困り事を解決するのか」という視点から、参加者、保護者、学校、行政、コーチ、企業など、多様な立場の課題を捉え、それを事業化していく上で重要だと説明されました。


事業を推進するためには、活動の価値を「言葉」にすることの重要性にも触れられました。単に「何をしているか」を説明するだけでは人には伝わらず、「その活動がどのような意味や価値を持つのか」を再定義し、共感を生むメッセージとして発信する必要があるということです。

また、組織を必要以上に大きくしないことも重要であり、「事業規模よりもソーシャルインパクト」を重視し、組織に見合った事業の「適正サイズ」を守ることが、長く活動を続ける条件になると語られました。


 最後に齊藤氏は、「20年間続けるために必要だったのは、強い想いよりも、想いが続く条件をつくることだった」と述べられました。好きなスポーツを続けるためには、お金、人、安全、価値発信、組織規模などを総合的にデザインする必要があります。そして、「スポーツを仕事にする」とは、好きなスポーツが続いていく条件を整えることなのだと、学生たちにメッセージを送られました。

スポーツを仕事にするということは、単に活動の指導だけではなく、活動を継続可能な事業として設計し、社会に価値として届けていく営みである、ということを学生は学ぶ機会になりました。

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