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【授業風景】産業社会学部専門特殊講義「読売スポーツ社会学講座」においてパリ五輪選手団長尾縣貢先生による講義を実施

〇「読売スポーツ社会学講座」とは

 産業社会学部スポーツ社会専攻では、開設直後の2008年度より夏季オリンピック・パラリンピックおよびサッカーW杯が開催される年度に、読売新聞大阪本社のご協力の下、専門特殊講義「読売スポーツ社会学講座」を開講しています。同講座は、世界規模のスポーツイベントに対し、現地取材をされた記者等の報道関係者、選手や選手団等の関係者、そして大学教員がリレー形式での講義を行う授業です。現代社会の諸問題を学際的な視点により捉え、解決策を考えるという産業社会学部の教学において、リアルな社会問題を捉える社会連携科目の一つです。
 異なる立場を持つ様々な講師による講義を通して、大規模スポーツイベントに関わる多様な事実、見方、考え方を学ぶことにより、それぞれの立場による功罪の解釈が異なることに気づき、その上で大規模スポーツイベントが持つ可能性を、より豊かな社会、世界の実現に繋げられるよう考えてもらうことを目的としています。
 今年度は、「スポーツ・メガイベントをめぐる功罪とスポーツ報道:パリ2024夏季オリンピック・パラリンピック競技大会を題材に」をテーマとして、300名を超える学生が受講しています。すでに9回の講義を実施し、スポーツ社会専攻教員による基礎知識の解説に加え、読売新聞社のみなさまから、パリ大会の取材・報道現場や取材を通した知見、新聞社によるスポーツイベント運営の実態等を語って頂いています。

〇パリ五輪選手団長尾縣貢先生による講義

 第10回の講義では、パリ2024夏季オリンピック・パラリンピック競技大会においてTEAM JAPAN団長を務められた筑波大学の尾縣貢先生に「2024パリオリンピック TEAM JAPANの躍動」というテーマで講義をご担当頂きました。
 講義の冒頭では、実際に試合会場や選手村で過ごされた中で撮影された写真を通じて同大会のテーマである「Games wide open」について説明頂きながら、一方では、ドローンによるテロ対策を行う兵士の様子を介して、世界中で注目されるイベントだからこそ生じる危険やその対策についてご紹介頂きました。
 続いて、TEAM JAPANとして、2021年に開催された東京大会の振り返りと、そこから見出された今後に向けての課題、それを踏まえてTEAM JAPANがどのように変わったのか、その結果として今回のパリ大会ではどのような成果があったのかをいくつかの観点からまとめてお話頂きました。特に、東京大会では、メダル獲得数等の競技成績は非常に高かったものの、その背景ではメンタル面での不調を抱える選手が数多く見られたことから、メンタル面での強化に注力し、日常的なサポート体制を確立させることが課題となったこと、それを受けて、パリ大会では、主将制度の廃止や選手村に競技間交流を重視するカフェを設置したことなどが紹介されました。その中でも、脱メダル主義を強調し、実際に尾縣先生ご自身が受ける取材ではメダル獲得目標を口にすることを控え、メダルよりも大切なスポーツの価値について語ってこられたことが印象的でした。そして実際にパリ大会ではメンタル面での不調を訴える選手が減り、伸び伸びとプレーされた結果、高い競技成績を残すことにもつながっていました。
 最後は、先生ご自身の研究成果を含め、選手が国際大会で最大力を発揮するために、極めて細かいコンディショニングに取り組んでおり、そうした細部にわたる取り組みが全てうまくいって初めて結果を残せることを紹介頂き、だからこそ、結果を残すことができた選手たちは称賛に値することをご説明頂きました。

 どのお話も、これまで長年にわたり、日本オリンピック委員会や日本陸上競技連盟で要職を務め、最前線で選手支援を続けてこられたからこその充実した内容で、常に選手を尊重、スポーツの価値を大切にされた見識に富み、それでありながら、非常にわかりやすく平易な言葉で学生に語りかけて頂き、あっという間に時間が過ぎました。

 学生からも、時間に収まりきらない多数の質問が寄せられていたことからも、受講生がこの講義に高い関心を持ったことがうかがえ、この講義を通じて、世界規模のスポーツイベントのあり方、可能性について考えるよいきっかけになったのではないかと思います。

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