教員紹介

FACULTY MEMBERS

言語・国際教育

下條 正純 教授
SHIMOJO MASAZUMI

専攻

言語・国際教育

専門分野
日本語、日本語教育
研究者学術情報データベース

研究テーマ

日本語における表現とその効果、物語(少女小説やライトノベル)に見られる発話表現と人物描写の関わりなど

おすすめ書籍

川端康成『乙女の港』実業之日本社、2011年
川端康成『完本 乙女の港』実業之日本社、2009年


「乙女の港」は1937~38年に雑誌『少女の友』(実業之日本社)に連載されて人気を博した戦前の少女小説を代表する作品です。執筆には作家の中里恒子が係わっていることが今日では知られています。横浜にあるミッション系女学校に通う生徒たちの交友関係を綴ったこの小説は、横浜紅蘭女学校(大正期当時)で学んだ中里自身の知る女学生文化が下敷きになっていると考えられます。登場人物の話す女学生ことばが独特な世界を描き、そこに中原淳一のモダンな挿絵が彩りを添えています。受験の日本史や文学史には出てこない、薫り立つ時代のひとコマを垣間見るような本です。もしどこかで初出の雑誌を手に取る機会があれば、ぜひページを繰ってみてください。記事から広告に至るまで、紙面からあふれ出る当時の世相や文化に興味が尽きません。

学生時代の思い出

学期のはじめに教科書を購入するのは日本もアメリカも同じです。私も毎学期、大学のブックストアー(日本の大学生協のようなところ)へ買いに行きました。ところで、アメリカでは日本と少し違っていて、新品の教科書と並んで古本も売っていました。ブックストアーには古本屋の機能もあって、使い終わった教科書を買い取ってくれたのです。古本は当然新品よりもいくらか安く、懐の寂しかった私は求めて買ったものですが、実は古本には安いこと以上の魅力がありました。それは、前の持ち主、あるいはもっと前の持ち主たちの勉学の痕跡です。大切なところに線が引かれていたり、そこここに書き込み(複数の筆跡が見られたこともあります)があったりするのです。まるで誰かがそっと手を貸してくれているようで、毎日が綱渡りだった私にはとてもありがたいものでした。そんな学生時代の想い出を閉じ込めて、いま教科書は静かに私の書棚に眠っています。

現在の学問分野に決めた理由

たしかに経済学部を卒業したのですが現在の学問分野は日本語学です。これに至る経緯は混沌としています。元来、ことばに感じ入る傾向はあったらしく、学部学生のころは漱石の文章を崇め、一冊読んでから何のレポートでも書いていました。自分も少しはましな文章を書こうという気持ちになるからでした。また、会社勤めだったとき、カナダ人の同僚に日本語を教えることになりました。これが難しかったのです。国語ではない日本語というものを俯瞰して考えるきっかけとなりました。その経験が、当時アメリカに興味のあった私に米国で日本語を教えるという野望を抱かせたのでした。そうして、日本語を学びに留学することを周囲から怪しまれ(まあ、そうでしょう)、言語学方面の知識不足からずいぶん苦労しながら、私は米国の大学院で日本語を勉強しました。その後も紆余曲折を経て、いま立命館大学で日本語教育に携わりながら日本語を研究しています。
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