教員紹介
FACULTY MEMBERS
メディア社会専攻
趙 相宇 准教授
CHO SANGWOO
研究テーマ
韓国社会のナショナリズムとメディア文化、日韓における植民地支配をめぐる感情や記憶の歴史社会学的研究。
おすすめ書籍
いきなりですが、皆さんは高校までの勉強で何が最も嫌いでしたか?私は歴史でした。高校までの歴史は「正しい答え」を丸暗記する側面がどうしても強いですが、なぜ「正しい」と言い切れるのかもわからないまま覚える行為に魅力を感じなかったのです。そんな私に歴史の魅力を教えてくれた一冊が、2014年にちくま学芸文庫から刊行された佐藤卓己著『増補 八月十五日の神話:終戦記念日のメディア学』です。
皆さんの多くは、小学校から高校にいたるまで、8月15日に日本は終戦を迎えたと教えられてきたはずです。しかし、実は戦争は8月15日以降も続きました。では、なぜ日本では「8月15日=終戦」となったのか。著者はメディアの報道やそれと共鳴する戦前戦後の日本社会の心性からその謎に迫っています。「正しい答え」ではなく、「いつ、なぜ、どのように」を冷静に見つめ、現代社会に向けて「良い問い」を投げかけることこそが、大学で歴史を勉強することの意味であり、この本はその面白さを教えてくれるはずです。
学生時代の思い出
私の学生時代の思い出のほとんどはゼミ活動が占めています。古き良き(?)ゼミで、課題も多く、先生もとても厳しい方でした。旅行が趣味で選んだ観光社会学のゼミでしたが、毎週のようなフィールドワーク、調査レポート、レジュメ、発表とゼミの仲間との夜遅くまでの議論と、気づけば1週間が終わっていました。その成果を「まなざしの観光:神戸はいつからオシャレになったのか」というタイトルで観光学術学会にて発表し、最優秀賞を獲得したのはほろ苦くも香ばしいコーヒーのような思い出でした。
こんな話を聞くと、「受験勉強以上の地獄がまた!」と落胆されるかもしれません。ですが、あのゼミは特殊だったと思います(笑)。先生によって指導の在り方は千差万別ですし、その中から自分に合ったものを選んでいくのも大学のだいご味です。ただ、「問いかける力」とそれを形にするプレゼン力を身に着け、練習する場というところは共通しています。ぜひ多くの仲間と脳に汗をかく体験をしてみてはいかがでしょうか。
現在の学問分野に決めた理由
私の専門分野はメディア文化論ならびに歴史社会学になりますが、学部時代は観光社会学のゼミに所属しておりました。一見節操がないようにも見えますが(実際そうなのですが…)、私自身が韓国出身の在日留学生ということもあり、日韓の植民地支配をめぐる葛藤をどう乗り越えれば良いのかが常に問題意識としてありました。専門分野として並べてあるものは、その問題意識から浮かび上がった問いをより鮮明にし、研究の道筋を立てるために私が選び、その使い方を習得したツールと言えます。
「~論」「~学」と聞けば、何か抽象的でわかりづらく、自分の人生とは別の領域と思えるかもしれません。しかし、それらは皆さんがこれまでの人生の中で何かしら抱え込んでしまった問題意識と向き合うことを手助けし、人生の荒波の中でも自分を見失わない灯台を作るサバイバル道具です。「難しいな」と恐れず、いっぱい触れて遊んで使ってみてください。その過程を通じて自分に必要な道具とその使い方を学んでいくのが大学ですから。