教員紹介

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メディア社会専攻

近藤 和都 准教授
KONDO KAZUTO

専攻
メディア社会専攻
専門分野
社会学/メディア研究
研究者学術情報データベース

研究テーマ

メディア論、映像文化の受容研究、メディア・インフラストラクチャー研究

おすすめ書籍

加藤幹郎『映画館と観客の文化史』中央公論新社、2006年

多くの労働力と予算をかけて制作される映画が産業として成立するには観客に見られる必要があり、観客と映画が出会う特権的な空間=メディアは映画館であるのだから、映画館と観客の関係史を描き出すことは映画史・メディア史において必須になります。映画館はいつ頃うまれたのか、空間構成が変わると観賞経験はどのように変わるのか、シネコンが成立する社会的条件はなにか、映画館では映画だけが楽しまれてきたのか、館内へのエアコンの設置はどのような象徴的意味を持ったのか、映画館に集ったのはだれだったのか、映画館から排除されたのはどのような人びとだったのか。こうした多岐にわたる議論を含む本書は、新書という形式で手に取りやすいのですが、アメリカと日本に焦点化した内容は非常に充実していて、いまだに日本ではこの本よりも網羅的で読みやすい映画館論・観客論は出版されていません。

学生時代の思い出

忙しくなったいま振り返ると、学生時代はとても贅沢な時間の使い方をしていました。私が通っていた大学のまわりには数多くの古本屋があり、講義の合間にぶらぶらと歩きながら、書店ごとに異なる本のラインナップや並べ方を楽しみ、ときには背伸びして、結局読むことはなかった大作小説などを当座の食費を切り崩して買っていました。少し歩くと2本立て上映を行う名画座があり、自分の検索に引っかからなかったであろう作品に出会うことができました。しかも大学には、あらゆる分野においてとんでもなく知識を持つ人たちがいて、自分の読書・鑑賞体験を彼ら・彼女らに話すと終わらない議論が始まりました。都市部の大学だからこその経験なのだと思いますが、メディア文化をめぐる人やモノ、場所のネットワークを体感したことが、いまの自分の研究上の関心を形作っているように思います。

現在の学問分野に決めた理由

もともと、私たちの日常生活に深く組み込まれている映像文化のあり方に興味があり、特にニュース報道が私たちの世界認識をどのように作り上げるのかといったテーマに関心を持っていました。ですが、大学2年生のときに映画学を専門とするコースに進級して、同じ映画を見ていたとしても自分とは全く異なる楽しみ方をする人々に出会ってから、メディアが作り出す共通感覚よりも、メディア経験の差異やそれを生み出す条件が気になり始めました。彼ら・彼女らの多くはいわゆるシネフィルといえる人たちで、良い友人関係を築いていたからこそ、強烈な異文化体験となりました。同じような社会階層・教育環境なのに文化的なものをめぐる感性が大きく異なるのはなぜなのか、どのような人が「シネフィルになる」ことができるのか、こうした問いを個人的な問題として片付けるのではなく、社会的な側面から理解したいと思い、メディア論と社会学に軸足を移していきました。
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