立命館大学人文科学研究所は、グローバリズムが、政治や経済、文化や社会の諸領域に生み出している諸問題を理論的に解明し続けています。

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2011年度研究会報告

「グローバル化とアジアの観光」研究会(2011.10.1)

テーマ 「タイにおけるバックパッカー観光客の行動に関する諸問題
 ―観光倫理からの考察―」
報告者 薬師寺 浩之(立命館大学地理学専攻実習助手)
報告の要旨

先行研究によると、先進国からの観光客の大多数は持続可能な社会構築に対する風潮に伴って、日常生活のみならず旅行中にも社会に対して責任ある行動をとらなくてはならない事を多少なりとも認識しているとされる。しかし、実際には異文化世界での様々な旅行障害や意思衰弱などから、旅行中の責任ある行動に対する認識・意図と実際の行動には大きなギャップが生じていることが明らかとなっている。

一方で、日常生活の鬱憤を非日常世界の観光地で晴らすことを旅行目的とする一部の観光客の行動は、過度の飲酒行動や麻薬摂取など、倫理的かつ法的に問題のある行動と結びつく。そこで、このような異文化的かつ非日常的状況の特殊な環境の中で、世界有数のバックパッカー観光地であるタイを旅行中のバックパッカー観光客は、どのような問題視される行動をとるのか、なぜそのような行動をとってしまうのか、それは観光倫理の観点からどのように解釈されるのかを、タイ北部山岳地域、バンコク・カオサンロード、およびタイ南部・パンガン島の事例を通して考察する。

薬師寺 浩之

テーマ 「体制移行期カンボジアの自文化をめぐる教育の変容(1979-2005)
 ―<踊り>の教育の政治化から非政治化へ―」
報告者 羽谷 沙織(立命館大学国際教育推進機構・准教授)
報告の要旨
 

カンボジアはアンコール・ワットで知られ、その遺跡群の壁画に描かれた天女をイメージさせるクメール舞踊もまた、カンボジアの文化として挙げることができる。たとえば、クメール舞踊の一つである古典舞踊は、18世紀初頭から1970年まで「宮廷舞踊」と呼ばれた。1970年3月、シハヌーク国家元首の解任によって発足した反王制ロン・ノル政権(1970―1975)は、宮廷舞踊から「宮廷」の文字を外し、「古典舞踊」へと改めた。古典舞踊は名称変更を経てもなお継承され、2003年、UNESCOは無形文化遺産に登録した。これを受けて2003年、政府側は古典舞踊の振興政策を打ち出した。ただしその内容は、外国人観光客に向けて古典舞踊を上演するという観光資源としての価値のみを期待するものではなかった。公教育を通して、カンボジアの若い国民が古典舞踊の文化的意味を学習することを期待するものであった。グローバリゼーションが進むなか自国民に自国のアイデンティティをどのように自覚させるかは、教育に託された課題でもある。とくに、カンボジアは1975年から1979年の間、ポル・ポトの文化破壊を経験し、自己の文化をいかに規定すべきかという問題と対峙してこなければならなかった。本発表は、古典舞踊の教育に着目し、ポル・ポト政権の圧政が終わり、カンボジアが和平へ向けて体制移行するなかで、国家の伝統や文化をめぐる教育がどのようなコンテクストのなかに位置づけられ、教育内容とコンテクストがどのように変容していったのかについて検討することを目的とする。

羽谷 沙織

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