TOPICS & EVENTS

09.22

2020

EVENT

2020年度立命館大学法学部卒業生のみなさんへ

立命館大学法学部長 祝辞

卒業生の皆さん

ご卒業、おめでとうございます。
皆さんの船出に心よりお祝いを申し上げます。


今年はCOVID-19が、私たちの社会生活に様々な影響を及ぼしています。例年通りであればこの学位授与式は、ご両親・ご家族・関係者の皆様、多くの友や後輩とともに、お祝いしていただく場です。皆さんの学びと成長を心より祝福する場としての、学位授与式をこのような形とせざるを得なかったことが、COVID-19の感染から皆さんの安全を守るためとはいえ、私たち教職員も残念でなりません。


現在のグローバル化の波は、あらゆる出来事を瞬く間に世界規模で拡大させています。その中で、私たちの生活様式そのものが大きく変化しようとしています。そしてそれはこのCOVID-19に関しても例外ではありません。


今から100年前、世界は戦争がもたらした悲劇を悔やみ、平和を追求すべく、法の支配の下、国際社会を統括する国際連盟を設立して、国際秩序を構築しようとしました。そうした国際秩序構築の営みは、幾多の困難を乗り越えながら、平和を願う世界の人々の手によって現在に受け継がれてきました。他方で、今、自国ファースト、ナショナリズムが世界各地で台頭し始め、国際秩序の変化に大きな影響を与えようとしています。こうしたナショナリズム台頭の流れは、国の社会的、経済的孤立を生み出していくことを私たちは歴史から学んでいます。また、COVID-19の感染拡大によって、個人の「孤立」も創出されていることは、皆さん自身も肌で感じておられることだと思います。世界が、非常に不安定な状況にあり、混沌とした世の中において、どのように歩み進んでいくか、こうした「孤立」の状況の中では答えを導き出すことが困難に思えてきます。


先の見えない不安、孤独を感じる状況の中で、人はどうしても目の前の情報に飛びつきたくなります。そして自らの考えや気持ちに寄り添う情報だけを選択して表現し又は行動したくなります。


しかしながら、こうした混沌とした状況でこそ、一度立ち止まってみてください。物事を俯瞰するために一度立ち止まり、あらゆる情報を検討していくことができる適切な時間的感覚を見失ってはいないか、自分に問いかけてみてください。


大学がWEB講義に完全に切り替わった春学期中、皆さんの間で、対面によるコミュニケーションの力を再認識されたことと思います。しかしながらこうした対面でのコミュニケーションが取れないという困難な状況の中で、対面ではない形での新たなコミュニケーション・ネットワークを創っていくという、現状を克服する取り組みもまた進められて来ました。こうした新たな課題に対して果敢に挑戦する姿こそが、立命館憲章や立命館大学の建学の精神・教学理念であり、末川博名誉総長が「未来を信じ、未来に生きる」と語り、皆さんに対して期待してきたことなのです。


法学部の教員は、皆さんがこれから社会という荒海に漕ぎ出していくための術を身に付けていただくために、自らの学問を社会との関連の中でお伝えし、また皆さんと共に研究してきました。「因果関係」「歴史的視座」「批判的な思考」といった言葉はすべて、物事を目の前の情報だけで判断するのではなく、時間をかけ時間軸を意識しながら答えを導き出していくための思考方法です。法学の学びは、単に学術的な概念を身に付ければいいというものではありません。あらゆる情報を収集し検討し行動していくための答えを導きだすことができるという、本当の意味での「知識」を身に付けることが必要です。私たち法学部教員は世界で通用する本当の力を伝授しようと努めてきました。法学部で学び、そして身に付けた法的思考力・論理力、バランス感覚そしてコミュニケーション力は、世界の様々な場所で活躍するために不可欠な力です。


法学部で培われた力を武器にこの不安定で混沌とした社会の中で、誤った情報に惑わされることなく自分の進むべき道の指針を導き出していってください。こんな時代だからこそ、法学部で学んだ術を大いに活用して、どうか皆さん、恐れず、ひるまず、前向きにチャレンジしてください。


また道に迷いそうになった時には、立命館大学法学部・法学部同窓会という港に遠慮なく立ち寄ってみてください。皆さんがこれから進むべき航路のきっかけをつかむことができるはずです。


法学部の教職員一同、いつまでも皆さんを応援して見守っております。皆さんの航海のご無事をお祈りしております。


2020年9月
立命館大学法学部長
德川 信治

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