教員紹介

専門分野

日本古代史・東アジア文化史

研究テーマ

漢籍受容史、〈術数文化〉研究、感性に関わる文化研究、日本書紀講書

高校の歴史教科書では一貫して「日本史」が語られます。しかし、縄文・弥生はもちろんのこと、はじめて遣隋使を派遣した推古朝であっても「日本」は存在せず、当時は「倭」と呼ばれていました。「日本古代史」とひとことで言った場合、すでにそこに大きな矛盾を抱えていることになります。つまり、「日本古代史」を研究するということは、「日本」とは何か、という問題と必然的に向き合うことになるのです。「日本」を所与のものとせず、その時代を考えること、それが「日本古代史」の研究なのです。それはまた、現在と地続きだと考えられている「日本古代」を異文化として見ることにもなります。「日本古代史」研究は異文化研究でもある、そう私は考えています。ちなみに、私は、東アジアの文化からその問題に取り組んでいます。

主要業績

  • 『日本古代漢籍受容の史的研究』(単著)汲古書院[2005]
  • 『渡航僧成尋、雨を祈る―『僧伝』が語る異文化の交錯―』(単著)勉誠出版[2013]
  • 『古代日本と中国文化―受容と選択―』(単著)塙書房[2014]
  • 『古代東アジアの「祈り」―宗教・習俗・占術―』(編著)森話社[2014]
  • 『前近代東アジアにおける〈術数文化〉』(編著)勉誠出版[2020]

専門分野

日本中世史・文化史・芸能史

研究テーマ

日本中世の身分と芸能(政治と文化、芸能者集団の存在形態、文化を通じた人のつながり)

中世の貴族が書いた日記を見ていると、毎日のように宴会をして、連歌会を開いたり、蹴鞠をしたりとなんだかとても楽しそうです。私たちの目から見ると「遊び」にしか見えないけれど、彼らはどうしてそんなに熱心に芸能をするのだろうか、というのが私の研究のテーマです。芸能の「社会的機能」と言い換えてもいいかもしれません。
ある芸能が新しく流行するという現象に注目することで、権力者たちが政治的な儀礼にそうした新しい芸能を取り入れていく様子や、芸能者たちの生活ぶりの変化が観察できます。同じように、神仏に捧げる芸能、宴会で行われる芸能が変化していく様子もわかります。こうした新興芸能の受容について調べることで、それぞれの身分で芸能が一体何の役に立っていたのか、どのような社会的機能を果たしていたのかを考えています。
「文化史」というと趣味の領域を研究しているように思われるかもしれませんが、前近代の社会と文化が密接に関係していたことを論じることで、政治と文化を切り離し、私的な領域に押し込めている私たちの感覚そのものを問い直せるのではないかと思っています。

主要業績

  • 『中世の〈遊女〉―生業と身分』(単著)京都大学学術出版会[2017]
  • 『女性労働の日本史』(共編著)勉誠出版[2019]
  • 『摂関政治から院政へ』(共著)吉川弘文館[2021]

専門分野

日本中世史・日本社会史

研究テーマ

社会的排除と包摂の歴史学的研究、変革期における国家と社会の関係史、歴史災害・飢饉におけるメディア編成の構造変動

14世紀(南北朝)、16世紀(戦国)、19世紀(幕末維新)は、日本社会が〈変わる〉可能性を持っていた時代です。私が研究してきた「江湖」の思想とは、この3つの時代にのみ流行した言葉です。じつは、あの坂本龍馬が脱藩した際の港の名前も「江湖」でした。〈変革期の歴史〉へようこそ!
人と人とのつながりをテーマに、政治学・社会学・哲学の垣根を越えて研究しています。中~近世における〈排除〉と〈包摂〉の問題。より具体的には、都市におけるスラム・クリアランス、飢饉や災害の際に、救いの手を差し伸べる範囲を決める〈線引き〉の論理、またそこで判断を迫られる〈現場人〉の思考、等が最近のテーマです。

主要業績

  • 『公共圏の歴史的創造─江湖の思想へ』(単著)東京大学出版会[2000]
  • 『選書日本中世史2 自由にしてケシカラン人々の世紀』(単著)講談社選書メチエ[2010]
  • 『〈つながり〉の精神史』(単著)講談社現代新書[2012]
  • 『日本の起源』(共著) 太田出版[2013]

専門分野

日本中世史・日本宗教史

研究テーマ

日本中世の国家と宗教、室町幕府の宗教政策

近年、南北朝時代や室町時代の研究が活況を呈しています。その要因はいくつもありますが、関係史料の利用環境の整備が大きな原動力になっているように思います。それにより研究の精緻化や量的拡大が進む一方で、大きな枠組みとしてこの時代をどのように捉えるのか、という議論が後回しになっているように感じます。「中世後期」という時代区分が長らく使われてきたことから、この時代は「中世前期」との関係に目が向きがちですが、近世史との架橋という論点も必要と考えます。私が専門とする中世宗教史の分野について言えば、かつての「鎌倉新仏教」論も、現在通説となっている「顕密体制」論も、中世後期から近世にかけての説明は具体性に乏しく、いまに至るまで明確な時代像は打ち出されていません。室町時代史の進展は、中世から近世への宗教史の転換という大きな問題を考える上でも重要な鍵を握ると展望しています。

主要業績

  • 『室町幕府の政治と宗教』(単著) 塙書房[2014]
  • 『禅からみた日本中世の文化と社会』(共著) ぺりかん社[2016]
  • 『仏教史研究ハンドブック』(編著) 法蔵館[2017]
  • 『中世の門跡と公武権力』(共著) 戎光祥出版[2017]
  • 『室町幕府将軍列伝』(共著) 戎光祥出版[2017]

専門分野

日本近世史

研究テーマ

近世成立期の権力・民衆の関係史、豊臣政権論

私の専門分野である「近世」は一般に、織豊期(織田信長・豊臣秀吉の時代)と江戸時代を指します。ところが、自明に思えるこの考えにも、いくつかの問題点があります。
まずは、時代区分の問題です。近世は英語にすると「early modern」であることから分かるように、元々は近代の前史として位置づけられ、独立した時代とは捉えられていませんでした。よって、中世や近代との境目はいつか、そもそもそうした区分自体が適切なのかを考える必要があります。
また、ひとまず冒頭のように時代を区切ってみた場合でも、近世の特質は何か、というのが次の問題として立ち上がってきます。かつては兵農分離・石高制・鎖国などの構成要素が重視されていましたが、最近ではそうした見方への再検討が進められています。中世や近代との違いは何か、近世の中でもどこに画期を置くべきなのか、古今東西の研究者たちが喧々諤々の議論をしているのです。
私も統治者と被治者の距離感に焦点をあて、近世の国家や社会が形成されてくる過程と背景を探る道半ばの研究者の一人です。皆さんも一緒に、「近世とは何か」を考える旅をしてみませんか?

主要業績

  • 『秀吉の虚像と実像』(共著) 笠間書院[2016]
  • 『石田三成』(編著) 戎光祥出版[2018]
  • 『中近世武家菩提寺の研究』(共著) 小さ子社[2019]
  • 『蒲生氏郷』(編著) 戎光祥出版[2021]
  • 『戦国乱世の都』(共著)吉川弘文館[2021]

専門分野

日本近代政治史・日本植民競馬史

研究テーマ

近代日本の河川と治水の研究、明治時代の行政機構と官僚の研究

明治維新後の100年間に、日本は世界史上かつてないほどの大変革を遂げました。それが具体的にどのように政策立案され、どのような政治過程を経て定着していったのか、そのことが日本の人々の暮らしをどのように変化させ、どのような影響を与えていったのかを総合的、多角的に研究しています。私の研究の面白いところは、おそらく題材の取り方ではないかと思います。治水や競馬など、従来政治史の素材としては扱われることの少ない題材を取り上げ、そこから日本の近代化・西欧化の本質に迫っていこうとする研究は、他の類例を見ません。オーラルヒストリー(聞き取りによる歴史叙述)を積極的に用いているところも、特徴の一つだと思います。

主要業績

  • 『西園寺公望関係文書』(共著) 松香堂書店[2012]
  • 『京都の歴史災害』(共著) 思文閣出版[2012]
  • 『講座明治維新3 維新政権の創設』(共著)有志舎[2011]

専門分野

日本近現代政治史・思想史

研究テーマ

戦前期日本政党政治史、戦後日本政治と思想

みなさんは支配ということを考えたことがありますか。
人に支配されることが好きな人はあまりいないでしょう(支配されておくのが楽な場合は間々ありますが)。人を支配することが好きな権力欲の強い人はしばしば存在しますが、人を支配することは簡単ではありません。簡単ではなく、また多くの人がそれを必ずしも望んでいないにもかかわらず、支配、すなわち「比較的少数の人間に多くの人がつき従っている」状態が成り立っているのは不思議なことです。
不思議と思えば、不思議と思うだけですませず、それを自分で解いてみるよりありません。私の研究は、つづめて言えば、そうした思いから始まっています。それを、人間社会の本質的な問題と考えて、近代公権力(主権)発生の必然性を解いてみようというのが私の研究の目標です。その作業によって、「私にはこう見える」という次元のものではなく、「誰にとってもそう考えざるを得ない」という論理を提起できないかと考えています。
そのためには、通常の感覚と少し違う感覚を働かせて、人間社会のリアリティーに迫る必要があるように思っている昨今です。
みなさんも大学生活の中で是非全力を挙げて対峙すべき対象を探し、それに妥協することなく向き合ってみて下さい。

主要業績

  • 『日本近代主権と立憲政体構想』(単著)日本評論社[2014]
  • 『現代国家と市民社会』(共著)ミネルヴァ書房[2005]
  • 『新しい公共性』(共著) 有斐閣[2003]
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専門分野

日本古代史・近代史学史(学知史)・京都学

研究テーマ

自他認識の日本史、地域住民の歴史意識

日本史や日本文化について考える時、周縁(地域的・身分的)から相対化する視点は必要不可欠だと思います。自民族の歴史や文化に至上の価値を求める考え方が、他者の過小評価や否定・排除に繋がりやすいのはなぜかを、夷狄(蝦夷・琉球)等を例に検討し、近代歴史学の形成過程と関連づけて考えています。
この「歴史の中の自他認識」を問いなおす視角は、我々が暮らす京都を考える上でも有効です。京都が纏う「雅な古都」や「文化首都」のイメージはいつどのように生まれ、何を切り捨てて現在に至っているのか。古文書や梵音具から、伝統工芸、紙芝居・マンガ、教育資料、戦時中・占領期の住民証言に至るまで、各時代の埋もれた資料を発掘し、地域に生きる多様な人々の実像や歴史意識の変容を跡づけます。

主要業績

  • 『日本古代の自他認識』(単著)塙書房[2015]
  • 『教養のための現代史入門』(編著)ミネルヴァ書房[2015]
  • 『差別と向き合うマンガたち』(共著)臨川書店[2007]
  • 『日本書紀一三〇〇年史を問う』(共著)思文閣出版[2020]
  • 『古代日本の民族・国家・思想』(共著)塙書房[2021]

専門分野

日本古代史・日本宗教史

研究テーマ

日本古代の律令国家、王権と仏教

政(政治)と祭(宗教)は、本来不可分の関係にある。前者は理論に基づく強制的従属、後者は観念に基づく自発的従属を促す要素をもち、双方を機能させることで、偽政者は効果的な支配を目指した。日本古代の律令国家も、律令という法制に基づく行政と共に、在来の神祇信仰と外来の仏教を利用する形で、安定的な支配を目論んだが、とりわけ、国家の中心に位置する王権にとっては、宗教的権威こそが、支配の正当性を保障する重要な要素となっていた。その実態と、段階的な特質を究明する事が、研究の中心課題であるが、併せて、各地方で見られた神祇信仰と仏教との交渉に関する歴史的特質についても、研究を進めている。

主要業績

  • 『律令国家仏教の研究』(単著) 法蔵館[2005]
  • 『白山信仰の源流』(単著) 法蔵館[2001]
  • 『考証 日本霊異記 上』(共著) 法蔵館[2015]

専門分野

日本中世史

研究テーマ

院政、公卿会議、中世都市、冷泉家

私の研究の特徴は、平安時代後期から鎌倉時代まで、一貫して朝廷、あるいは貴族社会から歴史を見ている点だと思います。この時期には、平氏政権、鎌倉幕府という武家政権が成立したので、政治史が武士に著しく偏って論じられてきました。そのために、どうしても当時の社会の実情とかけ離れたイメージが形成されてしまったのです。実際は、院や貴族などの政治的地位が高く、鎌倉幕府ができても、その状況はそれほど大きく変わらなかったと考えています。そのため、鎌倉時代といっても、京都の重要性は容易に失われなかったのです。

主要業績

  • 『公卿会議ー論戦する宮廷貴族たち』(単著)中央公論新社[2018]
  • 『後三条天皇』(単著)山川出版社[2016]
  • 『後白河天皇』(単著)ミネルヴァ書房[2015]
  • 『白河法皇』(単著)角川学芸出版[2013]
  • 『院政―もうひとつの天皇制』(単著)中央公論新社[2006]

専門分野

日本近世思想史・民衆思想史

研究テーマ

近世の儒学・国学・民衆宗教

現在、私たちの多くは、「日本国」において、「日本人」として、「日本語」で生活しています。しかしながら、江戸時代までは、「日本国」「日本人」「日本語」という意識は存在していませんでした。実は、江戸時代に東アジア・西洋を「他者」として把握することで、「日本国」「日本人」「日本語」は徐々に形成されていった意識でした。私の研究は、その形成過程を、東アジアを舞台に明らかにしていこうとするものです。東アジアの多くの大学の先生、学生たちと共同でこの研究テーマを追求しています。東アジアの人びとがどのように「日本」を見てきたのかを知ることで、「グローバルな17~19世紀像」を共につくっていきませんか?

主要業績

  • 『思想史で読む史学概論』(単著) 文理閣[2019]
  • 『幕末民衆思想の研究』(単著) 文理閣[2005]
  • 『自他認識の思想史』(単著) 有志舎[2008]
  • 『思想史の〈19世紀〉』(単著) ぺりかん社[1999]