人物紹介

心理学とは?Introduction

心理学ってなあに、
それ美味しいの?

先輩!『心理学』って何をする学問なんですか?

わあ!びっくりした。君だあれ?

あ、突然声をかけて失礼しました。はじめまして!私、茨木心理(いばらき ここり)と言います。今日はオープンキャンパスに来たので、せっかくですから色々知りたいんです!

ああ、そうなんだ。はじめまして。僕は総合心理学部3回生の西園立命(にしぞの りつみょう)。よろしくね。この学部のことはだいたい何でも知ってるから、遠慮なく聞いてね。

はい。ありがとうございます。実は私、親が私に『心理(ここり)』って名前をつけてくれたので、ものごころついてからずっと、『心理学ってなんだろう?』って考えてきたんです。でも、友達に『心理学に興味がある』って話しても、『他人の心が読めるようになりたいのね』とか『他人を操りたいの?』なんて言われちゃうんです。…それってなんか違うなあって。でも『じゃあ、心理学ってなに?』と聞かれても答えられないんです。

なーるほど。ここりさんは、本当に真剣に心理学のことを考えているんだね。僕なんか3年も心理学を学んできたのに、実を言うと『心理学って何なんだろう?』て、今でも毎日考えているんだよ。すぐに答えられなくてごめんね。

いえ、そんなことないです。先輩ってとっても正直で、誠実な方なんですね~♡。私、『心理学なんてこうに決まってる』なんて、簡単にドヤ顔で言う人って信用できません!

うわー。これは一本とられたなぁ。確かにそのとおりだね。あ、ちょうど、教授が近くにおられるので、一緒にお話を聞くことにしようか?

やあ、こんにちは。入試広報担当の川合総介(かわい そうすけ)です。君たち、とっても大切な話をしているね。心理学というのは、ひとつの「学問」だからね。学問で一番大切なことは、『軽々しく分かったような口をきく』ことではなく、真摯にものごとを考え抜くということなんだよ。

先生、それはそのとおりだとは思うんですけど、それじゃあ何の答えにもなってませんよ。

まあそのとおりなんだけどね。どの学問分野でも、『自分の学問とはそもそも何か?』ということは根本的な問いだけど、盲点になりやすいんだ。色々な人が色々なことを言うし、みんな微妙にくいちがうから、はっきりしたことは簡単には言えないというのが本当のところだね。

先生!純真な高校生の前でそれ言っちゃっていいんですか? そんなこと言ってたら、誰も心理学部を受験してくれなくなっちゃいますよ。

まあ、まあ。『心理学』という言葉を、文字通りに理解するなら、『心=こころ』についての『理=ことわり』を探求する学問であることはまちがいない。そうすると、まず、『こころとは何か?』 『こころを探求するにはどのような方法があるか?』ということから考えていくということになるだろうね。

なるほど、そうですよね。心理学って『こころ』を研究する学問だから、まず『こころって何か?』から考えないといけないですよね。…あのぉ、質問していいですか? 『こころ』って、目に見えないじゃないですか。目に見えないものを、心理学はどうやって探求したり、研究したりできるんですか?

うーん。良い質問だね。これについては、西園君、心理学を3年間総合的に学んできた君なら説明できるでしょう?

えー。やっぱり僕に振りますか?それじゃあ、うまくいくかどうか分かりませんが、これまで学んで来たことを僕なりに説明してみたいと思います。きっと、ここりさんが、ここに入学したら何を学んでいくことになるのか、イメージする助けになると思うよ。

わぁ!とっても楽しみです。先輩~♡ よろしくお願いしま~ぁす。

Part 1へ続く

心理学とは?Part1

『こころ』は
どうやって研究するの?

西園先輩! ひとつ質問があるけどいいですか?

もちろん、いいよ。なに?

私、今年の四月から総合心理学部で学ぶことになるんですけど、心配なことがあるんです。私ってとっても人見知りな性格なんで、大学で友達ができるかどうか不安なんです。

え?ここりさんが?うーん、とてもそうは見えないけど?

でも、小さい頃から初めての人と話そうとすると緊張しちゃって、うまく話せないんです。これって『こころ』の問題ですよね。心理学を学んだら、この問題も解決できますか?

ここりさん。ちょうど良い話題を提供してくれたね。3年間心理学を学んできた西園君なら、説明できるだろう。

はい。じゃあできるだけうまく答えるように努力してみます。まず最初に心理学は『こころ』という目に見えないものを扱うので、それを『ある程度目に見えるもの』にしないといけません。そのために、色々な心理学の立場によって、色々なやりかたを工夫しています。

え、心理学のやりかたって一種類じゃないんですか?

そうなんだよ。心理学にはとてもたくさんの種類があって、たった一つの決まった方法があるわけじゃない。それぞれが工夫しながら、色々な方法を編み出してきたんだよ。

一番代表的なやりかたって、どんなものなんですか?

うんそうだね。一番代表的なのは、『心理学は目に見えるものだけを扱う』って、割り切ることなんだよ。例えば、ここりさんは、自分では人見知りだって思っているけれど、僕から見るとそうは見えない。それは、僕がここりさんと初めて会った時、ここりさんのほうから僕に話しかけてきたでしょう。つまり、ここりさんは『初対面の人に自分から接近する行動』をとることができるので、人見知りとは言えないと僕は思ったということなんだ。

でもそれは、先輩がとっても話しかけやすそうなオーラを出しておられたんで、思い切って声をかけることができたんです。内心はドキドキだったんですよ。あ、そうか。私がどう感じているかとか、どう考えているかは外からは見えないので、実際に観察することができる私の『接近行動』に先輩は注目したんですね。

ここりさんは、飲み込みが早いなぁ。今話題になっている、『こころを研究するということは行動を研究すること』というのは、心理学のうちでも最も有力な考え方のひとつなんだよ。これは『行動主義心理学』なんて言われている。総合心理学部に入学すると、まず最初にこの考え方について学ぶことになるだろうね。

そうなんだよ。行動は誰でも観察できるし、行動のあるなしや、回数を数えることが客観的にできるので、普通に言う『科学』ととっても相性がいいんだよ。でも大学に入る前に想像していたこととは真逆なので、僕も最初はとってもびっくりしたんだ。

ふーん、なるほど。でも、ちょっと疑問があります。目に見える行動だけを扱って、こころの全体が分かるんですか?私が大好きな『星の王子様』に出てくるキツネさんも、『一番大切なものは目に見えない』って言ってるんですけどぉ…。

うん。その点についても、心理学では色々工夫をしているんだよ。その一つはね、『行動』の範囲をとても広く定義するような考え方があって、ちょっと冗談みたいだけど、『行動は生きている人間が環境とのあいだで行う全てだから、死体にもできること以外は全部行動!』なんてことも教わったなぁ。

へぇー、面白い考え方ですね。『人見知り』って、死体にもできるのかしら?うーん。死体は人に出会った時、近づいてもこないけど、逃げもしないですね。それに『恥ずかしいなあ』なんて死体は思わないし、たぶん死体は緊張もしないですよね。そうか、私が初めての人に出会った時に実際にとる行動だけじゃなくて、感じたり、考えたり、話したりすることもみな『行動』の一種なのかしら。

え、びっくりしたなぁ。ここりさん、あっという間に『徹底的行動主義者』になってしまったね。

ははは。『徹底的行動主義』は、最新の心理療法と言われる『第三世代認知行動療法』でも採用されている考え方だ。心理学には他にも色々な考え方があるんだけど、その話はまた次にすることにしようか。

Part 2へ続く

心理学とは?Part2

『こころ』は
どうやって研究するの?

西園先輩!私今日から『徹底的行動主義者』になって、自分の『人見知り』問題を解決しようと思います!

おー。ここりさん、張り切っているね。

でも何から始めたらいいのかしら?この間、先輩は、『君の行動から見ると、君は人見知りではない』っておっしゃいましたよね。そうか、そもそも私が『人見知り』かどうかって、どうやったら分かるんだろう?

とても良い質問だね。『人見知り』が一つの『性格』だとして、ある人がその性格を持っているかどうかを、心理学はどう扱うかという問題になるね。西園君説明してください。

はい。こういう問題を扱う心理学は、一般には『パーソナリティ心理学』と呼ばれています。『パーソナリティ』とか『人格』とか『性格』とか、ほぼ同じことと考えてもよいと思います。この領域で一番よく使われる方法は、いわゆる『心理テスト』ですね。難しくいうと『心理測定』とか『心理査定』とか呼ばれる方法です。

わー。とっても興味あります。心理テストをすれば、私が『人見知り』かどうかすぐ分かりますよね。

僕も入学したての頃はそう思っていたんだけどね。授業でしっかりと学んでいくと、どうもそんなに簡単ではないみたいなんだ。

え、そうなんですか?

例えば、ここりさんが人見知りかどうかを知るためには、まず『人見知り』というものはなんであるのかをしっかりと言葉で定義しなければいけないんだ。それも、客観的に行動観察できるようなものとして定義しないと、科学的には扱えない。そういったやりかたは、心理学では『操作的定義』と呼ばれている。でもこれって、結局は『言葉を創っている』ということになるので、創られたことばは『構成概念』って呼ばれているんだよ。

うわー。難しそうですね。でも、確かに『人見知り』なんてものが、私の頭の中にあるわけじゃないですもんね。なるほど、本来目に見えない私のこころをテストで客観的に測定可能にするためには、それを『構成概念』にしなければならないのですね。

うーん。ここりさん。あなたはもう半分心理学者になっているね。

…僕、入学したての時は、そんなことさっぱり分からなかったなぁ。ま、とにかく、ある性格を厳密に定義したいくつかの『構成概念』の束に変換して、定められた科学的な手順を使ってそれらを測定するのが、パーソナリティ心理学の定番の方法だね。こういう方法については、専門の授業でみっちりと習うと思うよ。

うわー。そういうことを学べるなんてとっても楽しみです。

テレビやインターネットでよく使われているような『いわゆる心理テスト』は、こういう科学的な手順を踏んでいないものがほとんどなんだよ。だから簡単に信用しちゃいけないって、授業で習ったなぁ。僕もまだまだ分かっていないことばかりなんだけど、心理学を学ぶ以上はしっかり勉強しなくちゃいけないと思っているよ。

はい。私もがんばって勉強したいと思います。ところで先輩、もうひとつ質問していいですか?私、たぶん人見知りな性格なのに、西園先輩には初めての時でも思い切って質問できたじゃないですか。今じゃあ、こうやって何でも質問してますよね。これって、私の『人見知り』という性格が変わったっていうことなんでしょうか?

うーん。パーソナリティ(人格)というものは、簡単には変わらないものだって授業では習ったような気がするなぁ。他の人と話す時や他の状況ではどうなの?

正直のところ、自分でもよく分からないんです。大学に入学した後のことを考えると今でもとっても不安です。でも最近ずいぶん軽くなったような気もしますし、いったいどうなんでしょう?

ちょっと横から失礼。この問題はね、専門的に言うと、『パーソナリティの一貫性問題』なんて言われているんだ。つまり、人間の性格というものは、状況や相手によって変わるものなのか、あるいはそれとは関係なしに一貫したものなのかという論争だ。このような議論を科学的に行うためにも、心理学の研究はとても大切な役割を果たしたことは間違いない。まあ詳しいことは入学してからのお楽しみにしておいてはどうかな。それじゃあ、今日はこのくらいで。二人ともご苦労様。

はーい。

ありがとうございました!