写真左より:
上宮 愛
総合心理学部 総合心理学科 助教 (インタビュー当時)
藤本 和希
総合心理学部 総合心理学科 3回生(2021年2月取材)

総合心理学部 総合心理学科 助教 (インタビュー当時)

上宮 愛

大学を卒業後、東京都立大学大学院の修士課程を経て北海道大学大学院の博士後期課程単位取得満期退学。2014年に浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター 特任助教に。2017年4月、立命館大学OIC総合研究機構 専門研究員、2019年、同大学総合心理学部の特任助教に就任。

Special Edition#22

子育てしながら研究を続けていくそのビジョンが見えてきた
~ライフイベントに関わる研究支援員制度を利用して~

研究支援員制度を利用し、子育てと研究を両立

上宮 愛 総合心理学部 総合心理学科 助教

研究支援員制度の利用を考えた理由は?

前職の研究機関では、コホート研究チームの一員として研究と業務に忙しい毎日を送っていました。妊娠がわかった時に、一旦退職。出産後、約1年間育児に専念した後、2017年4月に立命館大学OIC総合研究機構の専門研究員として本格的に復帰しました。
現在は、「司法面接」という面接手法について研究しています。これは事件や事故に遭った子どもに負担をかけることなく体験したことを正確に聴き取る手法。大人の誘導・暗示的な質問によって、事実とは異なる被害を告白してしまうことを防ぐことを目的に開発されました。近年は子どもだけでなく、特別な配慮を必要とするさまざまな人に対する事実確認にも司法面接の重要性が指摘されるようになっています。私は幼児の他、定型発達の人とは異なる記憶特性を持つ自閉スペクトラム症者に対する司法面接にも関心を持っています。とはいえ子育てをしながら、データ収集や分析に多くの手間と時間がかかる「面接」研究に取り組むのは簡単ではありません。どうしたものかと悩んでいた時、「ライフイベントに関わる研究支援員制度」を知り、申請しました。

制度を利用して良かったことは?

研究支援員制度の助成金で雇用した研究支援員の手を借りて新たなテーマで研究し、その成果を出産後初めて学会で発表。研究を再始動するきっかけをつかむことができました。
制度を利用して良かったことの一つは、当然、研究にかかる負担を軽減できたことです。幼い子どもがいると、仕事に割ける時間は必然的に少なくなります。支援員の学生に司法面接の実験や、分析のためのデータ整理を手伝ってもらったおかげで、研究をやり遂げることができました。何より良かったのは、「もう一度研究者としてやっていける」という自信を持てたことです。多くの場合、出産や育児に手のかかる時期と研究者としてのキャリアを積むことが重要な時期は重なっています。私の任期にも限りがあり、次のキャリアの獲得を見据えて確かな研究実績を重ねていけるかと不安を感じていました。研究を支援してもらえる制度があることで心に余裕が生まれ、前向きに研究に臨むことができます。

研究支援員制度をきっかけに共に研究する仲間が増えた

現在の研究と今後の展望をお願いします。

研究支援員制度を活用して2年目の2019年、特任助教に就任。その2年前の2017年度後期から自閉スペクトラム症者の方々を対象とした新たな研究に取り組みました。自閉スペクトラム症者と一般大学生で司法面接によって収集できる情報の量や正確さに違いが見られるか、司法面接の実験を通じて検証を試みました。2019年度からは、研究支援員の藤本さんがコーディングと言われる分析作業を手伝ってくれ、スムーズに研究を進めることができました。
研究支援員制度のもう一つの利点は、司法面接の領域に興味がある学生や若い研究者と出会えることです。これをきっかけに、同じ領域で研究する仲間が増えれば、これほど嬉しいことはありません。
これまで「司法面接」の研究・実践に関しては、欧米が先んじてきました。今後はその後を追うのではなく、国内、そして、アジアの研究者と一緒に、日本やアジア特有の問題に挑み、アジアから世界へ新たな研究知見を発信していきたい。その際、司法面接に興味を持っている若い研究者とも一緒にこれらの課題に取り組んでいきたいと意欲を燃やしています。

研究支援員の業務が、自分の研究にも役立っている

藤本 和希 総合心理学部 総合心理学科 3回生

研究支援員になった理由は?

1回生の時、心理学の授業で「司法面接」について学んだことが、関心を持ったきっかけです。2回生の時、上宮先生の研究発表を聞いて「司法面接についてもっと知りたい」との思いが膨らみました。大学の司法面接支援室を見学したり、学会で催された司法面接に関する企画などに積極的に参加。上宮先生から研究支援員の打診を受けたのは、そんな時でした。

支援員としての活動はいかがでしたか?

3回生から司法面接について学ぶため、司法面接プロジェクトの代表でもある総合心理学部の仲教授のゼミに所属し、自分自身の研究を始めたところです。研究支援員としての活動を通じて学んだことのすべてが自分の学びや研究に役立っています。後期には、卒業研究を前にプレ卒論の研究に取り組みました。上宮先生の研究のサポートを通して司法面接研究の方法や分析手法に関する基礎知識を学び、研究の進め方を間近に見たおかげで、自分自身の研究もつまずくことなく進めることができました。卒業後は、大学院に進学し、司法面接についての学びと研究を深めたい。将来はここで身に着けた専門知識を生かせる分野に就職できたらと考えています。