研究室紹介

物理科学科は理論系、実験系、地球物理系の全13研究室から構成され、お互いが協力し合って研究をおこなっています。

理論系 | 実験系 | 地球物理系

−理論系研究室−

池田研究室「物性理論」

鉄系高温超伝導体LaFeAsOの結晶構造
鉄系高温超伝導体LaFeAsOの
結晶構造

■高温超伝導体、新しい量子相の発見を目指して

新しい機能材料の発見は技術革新の可能性を秘めています。しかし現在の所、非経験的な理論計算から物質の性質を高い精度で予測する事はできていません。例えば、超伝導のように量子力学的な効果が巨視的なスケールで現れる現象では、個々の電子を記述する物理法則とは異なる多体相関の概念が必要になります。当研究室では、物質群に特有の電子状態の知識をもとに、その系がなぜ磁性や超伝導特性を示しうるのか、そのメカニズムを解明し、新しい理論概念を構築することを目指しています。さらに長期的視野では、新奇物性や新しい量子相の予言、高温超伝導体などの物質設計にも取り組んでいます。

教授:池田 浩章

清水研究室「計算基礎物理」

NOW PRINTING

■ゆく河の流れは絶えずして,しかももとの水にあらず -計算機を通じて原子や分子の無常を愛でる-

我々の周りの世界はミクロからマクロにいたるまで絶えず動きながらその姿を変えています。一見不変に見えるものもよく目を凝らせばそこには非常に多様な動きがあります。我々の研究室では、原子や分子の世界での動きを計算機によって模倣し、それを数理の言葉で理解することを目指しています。コンピュータの世界からダイナミクスの数理を理解し、そこから観測結果に新たな解釈を与えたり新たな実験の提案をすることが我々の目標です。

教授:清水 寧

菅原研究室「素粒子論」

カラビヤウ空間のイメージ
超弦理論で予言される内部空間(カラビヤウ空間)のイメージ

■超弦理論と素粒子の統一理論

すべての物質の根源である素粒子とその間に働く力を統一的に記述し、宇宙の構造を決定する基礎理論を構築することは理論物理学者の長年の夢であると言えます。

この研究室ではそうした統一理論の有力な候補である超弦理論(超ひも理論)を中心とした素粒子物理学の研究をはじめ、深く関連する宇宙論・ブラックホールの物理といったテーマについても研究しています。

教授:菅原 祐二 助教:横山 修一

藪研究室「量子場の理論物理」

NOW PRINTING

■場の量子論による量子多体系の研究

電場・磁場のように空間の各点に物理量が対応するのが場で、その運動を記述する理論が場の量子論です。この理論を用いて、原子気体のボース凝縮状態など物質の新しい量子状態を理論的に解明し、ガンマ線レーザーなど新技術への応用に対する基礎的研究を行なっています。

教授:藪 博之

和田研究室「生物物理・非平衡物理」

理論生物物理学
紐のねじれ:電話線からDNAまで
共通する普遍的な力学現象

■生命の動き、かたち、パターンを物理と数学で解き明かす

我々の日常生活をかたちづくる身近な物理現象は多様ですが、そのほとんどすべては動的で非平衡です。物質やエネルギーの流入と散逸が拮抗する動的な状態が、自発的な秩序形成や特異な転移ダイナミクスを生み出します。とくに生命現象はそのような非平衡現象の宝庫です。我々の研究室では、ソフトマター物理学、流体物理学、非平衡物理学などの手法に基づいて、生命現象を含むマクロな自然現象全般について研究しています。ほかではあまり研究されていないようなユニークなテーマを取り上げ、それらの現象の背後にあるメカニズムを理論と実験を組み合わせて解明することを目指しています。

教授:和田 浩史

−実験系研究室−

今田研究室「スピン物性分光」

高分解能光電子分光装置
高分解能光電子分光装置

■電子状態の分光によるスピン物性の機構解明

物質の性質は、ほとんどが物質中の電子の性質で決まっています。例えば、ガラスが透明なのは、ガラスの中の電子が光をほとんど吸収しないからです。電子は原子核の周りを回っていますが、自転もしていて、この自転のことを「スピン」と呼びます。鉄は同じ向きのスピンを持つ電子が多いために磁石になります。

ほかにも電子のスピンのために、温度を変えると金属が絶縁体に変わったり、実に様々な興味深い性質が現れるので、私たちはそのメカニズムを解明することを目的に研究しています。

物質中の電子の状態を直接的に知るために、紫外線やX線を物質に当てて、飛び出してきた電子のエネルギーを測定する「光電子分光(こうでんしぶんこう)」などの分光実験を、大学だけでなくSPring-8などの研究施設で行なっています。

教授:今田 真 助教:中田 惟奈

是枝研究室「レーザー分光物理」

SORIS
コヒーレント熱波動を創り出すレーザーと光学系,および0.3Kの極低温分光を実現する冷凍機システム

■先端的レーザー分光法を用いた誘電体素励起の励振と精密測定

レーザー分光法は、非常に高い周波数精度(=長い時間振動が消えない光)や非常に短いパルス(=一瞬だけ輝く光)が実現され、いわば「永遠から刹那まで」をも探索できるダイナミックな実験手法であると言えます。当研究室ではレーザーを駆使した高精度な分光測定を通して、物質内部のさまざまな励起状態に関してそのエネルギーや寿命などの精密な情報を取得し、物性物理学においてこれまでに未解決な種々の問題に挑んでいきます。さらに、単に「観測すること」を超えて、レーザー光を用いて積極的に物質内部に特異な励起状態を創り出し、その励起状態を光で自由自在にコントロールする可能性をも探っていきます。このような光による物質状態の制御は、エネルギー輸送や通信といった、将来のさまざまな応用につながる重要な基礎を与えるものとなります。

教授:是枝 聡肇  助教:根間 裕史

滝沢研究室「放射光励起物理」

SRセンターの放射光発生装置と実験装置
SRセンターの放射光発生装置と実験装置

■放射光励起による原子軌道状態制御

立命館大学SRセンターの放射光を用い、原子軌道状態を制御した励起により、機能性材料の研究を行っています。

放射光とは、赤外線から紫外線、そしてX線までも含むとても強力な光です。キャンパス内にあるSRセンターで、この放射光が利用できます。放射光から適切な光を取り出すと、元素を選んで励起することができますので、材料中での知りたい元素の情報を得ることができます。さらに、放射光の偏向特性により原子軌道状態に特有の励起を引き起こし、原子軌道の向きも分かります。このように、放射光励起によって原子軌道状態を制御して、物質の機能性研究を行います。

准教授:滝沢 優  助教:長谷川 友里

中田研究室「メゾスコピック物理」

タンパク質の分子配列
タンパク質の分子配列

■メゾ領域の相変態過程や界面現象の研究

原子が数百個から数万個集まって、ある構造をもった状態は、マクロでもなくミクロでもない「メゾ:中くらいの世界」と呼ばれています。そして、生体を形作るタンパク分子などの物質はメゾスコピックな物質と呼ばれ、マクロ物質には見られない性質を備えています。このような「メゾ」領域に関する研究を行っています。

教授:中田 俊隆  助教:荒木 優希

深尾研究室「ソフトマター物理」

NOW PRINTING

■ソフトマターの階層構造とダイナミクスの研究

宇宙がダークマターで満たされているように、私たちの身の回りはソフトマターで満たされています。私たちの研究室ではソフトマターの代表である高分子を対象に、ガラス転移や結晶化の機構解明のための実験的な研究を行っています。

教授:深尾 浩次  助教:吉岡 潤

森研究室「高エネルギー天体物理」

SNR
超新星残骸におけるガンマ線発生の模式図

■ガンマ線を探針とした高エネルギー宇宙の探究

宇宙に存在するさまざまな天体をとらえるには、目に見える光のみでは全く不十分で、電波からガンマ線にいたるいろいろな波長で観測して初めて明らかにされる現象がたくさん存在します。特に最も波長の短いガンマ線は、超新星残骸やパルサー、活動銀河核など、最も活動的な高エネルギー天体とそこにおける粒子加速現象の研究に適しています。人工衛星や地上ガンマ線望遠鏡のガンマ線観測データを用いて、これらの現象を解明していきます。

教授:森 正樹  助教:奥田 剛司

−地球物理系研究室−

小笠原研究室「震源での物理学」

金鉱山の竪坑塔
地下3kmへの入り口(生産量が南ア最大の金鉱山の竪坑塔)

■南アフリカ金鉱山の震源での地震の研究

地下1〜3.4kmで発生する地震(マグニチュード2程度以上)の発生やその危険度・切迫度がどのようなモデルで説明できるかを研究しています。マグニチュード9.0(東北地方太平洋沖)を予見できなかったことは、非常に残念です。南アフリカ金鉱山の地震の震源では、地震学が地震リスク低減に役立つことを実証できないかと、努力しています。

教授:小笠原 宏

川方研究室「固体地球物理」

断層形成途上の花崗岩試料
断層形成途上の花崗岩試料。
白い部分は将来の断層。

■地震発生機構および地震波動伝播

地震は、我々の生活に被害を及ぼしかねない恐ろしい物理現象です。しかし一方では、地震にともなう断層運動により我々の生活基盤となる平野や盆地が形成されてきました。また、活断層は地下水を提供してくれます。日本列島の美しい自然は、地震現象の産物だともいえます。地震が多発する日本列島に暮らす限りは、自然の恩恵にあずかりながら、地震とうまく付き合っていくことが大切です。そのためには地震や活断層のことを詳しく知ることが肝要です。

地震は、いつどこで、どんな規模で、どのように発生するのでしょうか?発生する前から地震の規模は決まっているのでしょうか?地球内部の岩石は地震波が通り抜けていくときにどのような反応を見せるのでしょうか?私たちは、実験・観測・地震波データの解析を通じて、このような震源の物理や地震波に関する基礎的な問題に取り組んでいます。

教授:川方 裕則  助教:平野 史朗

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