コラム

大学生とカウンセリング

 みなさんはカウンセリングという言葉にどんなイメージを持っているでしょうか。「カウンセリング=精神的な病気の治療」と思っている人がいますが、カウンセリングで扱うのは、病気というよりもさまざまな心理的課題です。

 青年期後期にあたる大学時代は、モラトリアム(猶予)と言って、自己形成のための試行錯誤が許される時期と考えられています。試行錯誤を経て「自分はこれでよい」という感覚を獲得して社会に出て行くことが青年期後期の課題で、このような感覚が根づくことをアイデンティティの確立と言いますが、大学生のカウンセリングでは、ほとんどの場合、この青年期的課題が関わってきます。

 カウンセリングは、よくないところを治してもらうとか、解決方法を教えてもらうとかいったものではなく、自分で自分を見つめ、自分で課題と取り組むのをカウンセラーに手伝ってもらうことだと言えます。話をすることで自分を振り返り、少しずつ自力で前に進んで行く、そういう成長力が人間には備わっているのです。

 自分について人に話すのは、自分では分かりきったことを人に伝える作業だと思うかも知れません。しかし、私たちは自分自自身についてそれほど分かっていないことが少なくありません。人に話すことには、まず、自分について人に伝えようとすることで、漠然としていたものがはっきりするという効用があります。

 もうひとつの効用は、相手に分かってもらえると、「自分ひとりで悩んでいるのではない」と感じ、孤立感がやわらぐことです。そうして気持ちにゆとりが生まれると、上で述べた成長力が活動しやすくなるのです。

 自分自身に関心が向く大学時代はカウンセリングに適した時期です。あなたも、自分の成長のためにカウンセリングを試してみてはいかがですか?


学生サポートルーム副室長
応用人間科学研究科 教授
徳田完二