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講座エッセイ


2022年10月29日(第3368回)

講師:立命館大学文学部 教授 遠藤 英樹
演題:人文・社会科学におけるモビリティ研究――「オフショア化する世界」のリスクに立ち向かう知


 社会のあり方は、現在、大きくゆれうごきつつある。多くの人・モノ・資本・文化・イメージ・情報等が国境を超え頻繁に移動する「グローバル世界」に、私たちは生きている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめとする感染症も、こうしたグローバル化と深く関わっている。この感染症は、人やモノのモビリティ(移動)によってエアロゾル、そしてウイルスが世界中を移動し拡散しオフショア化された結果なのである。また2022年2月24日に始まったロシア連邦によるウクライナ侵攻も、ウクライナという限定的な地域のもとへ、多様な国々が関与するグローバルな戦争がオフショア化されたものだと解釈できる。現代においては、ウイルス、テロ、戦争、気候変動などによるリスクは、国境を越えていくグローバルな世界において現れ出るものとなっている。本発表では、現代社会が創り出すグローバルなリスクに立ち向かうために、人文・社会科学的なモビリティ(移動)研究に何ができるのかを問う。
講師:立命館大学文学部 教授 小関 素明
演題:災害が民主政治におよぼす影響について


 大規模災害は、ときに近代社会において人々が政治に向き合う意識や姿勢を変え、さらには権力のありかたを変えてしまうほどの大きな影響力をもつ。そしてこれは、民主政治に対して危機的な作用をおよぼす場合があることに注意が必要である。
 ここではそうした事例の一つとして、1934年の室戸台風、翌年6月の集中豪雨が当時の京都の住民の意識にどのような影響をおよぼしたかを検討することを通じて、この問題を検証してみたい。
講師:立命館大学文学部 教授 亀井 大輔
演題:近さと隔たり──コロナ禍における現前性の問題(仮)

 私たちは2020年以来、新型コロナウイルス感染症の拡大という予期せぬ出来事の渦中(いわゆるコロナ禍)にいる。この間、感染者数の推移や、ウイルス、免疫、ワクチン等の特性に注目が集まり、ステイホーム、マスクの着用、ソーシャル・ディスタンスの確保、またオンライン授業、テレワークなど、新たな生活様式が唱えられてきた。こうした動向は、さまざまな哲学的問いを引き起こすものでもある。発表では、コロナ禍の経験を振り返りつつ、フランスの哲学者ジャック・デリダの思想や、現代の哲学者の発言も手がかりにして、近さと隔たり、現前性などについて考えてみたい。
講師:立命館大学産業社会学部 准教授 加藤 雅俊
演題:現代社会が直面する諸課題に対して政治学が貢献できること
   ―人文科学研究所での共同研究を手がかりとして―


 地球環境問題や新型コロナウイルス感染症の拡大をはじめとした世界規模の課題から、貧困・格差の拡大や様々な不平等の存在などの国内的な課題まで、現代社会は様々な課題に直面している。これらの諸課題に対して、アカデミズムは様々な知見を蓄積してきているものの、その意義と限界については十分に理解されていない。〈グローバルなリスク〉をはじめとした様々な諸課題に対して、人文・社会科学はどのような貢献をなし得るのだろうか?本報告では、報告者の専門である政治学の知見と、人文科学研究所での共同研究の経験をふまえて、人文・社会科学の可能性と課題について考察し、新しい時代の〈知〉のあり方を検討する。
講師:立命館大学国際関係学部 准教授 川村 仁子
演題:科学・技術と人文・社会科学の地平の融合


 先端科学・技術のリスクと人文・社会科学の課題について議論する。科学・技術、特にAIやナノテクノロジー、遺伝子工学といった先端科学・技術は、人類の抱える問題を解決する手段となり、新たなビジネス・チャンスを作る一方で、 放射性物質や有害化学物質の脅威から、SFの世界のものとして捉えられてきた脅威まで、人間社会の根底にある人間そのものをモノ化することで、これまで築き上げられてきた価値観や権利、安全を覆す存在にもなりうる。つまり、先端科学・技術は人類の「希望」となるのか、「脅威」となるのかという両義性を常に有している。それゆえ、先端科学・技術のガバナンスにおいては、研究・開発を妨げずに、いかに予想を超える被害をもたらしうるリスクに対応するかという、研究・開発の促進とリスク管理の両立が必要となる。
 そして、将来的に科学・技術の発展にも増して重要なのは、それらを私たちの社会がいかに受容し、いかに管理していくかという人文・社会科学の課題である。加えて、技術的先進国と途上国の間の利益の公平な配分、人類全体に関わるリスクの管理などのためにも、国際的な制度あるいは規範によるガバナンスの枠組みが必要とされる。


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