2005年6月11日 (第2730回)

考古学からみた古代国家の形成過程

文学部教授 和田 晴吾

 日本列島における人類の長い歴史のなかで本州諸島の九州南部から東北南部にいたる広い範囲において、人々が熱にうかされたように「古墳」という特殊な墳墓を盛んに築いた時代がありました。3世紀中葉から6世紀末にかけての、いわゆる「古墳時代」です。

 その数は前方後円墳が約4,700基、前方後方墳が約500基、大小の円墳・方墳を含めた総数は10万基を遥かに凌駕します。最大は大阪府大山古墳(伝仁徳天皇陵)で全長約486m、最小は5m前後。

 なぜ、そんなに大きなものを、そんなにも数多く造ったのか。それだけでも興味を引きますが、この時期がわが国の古代国家の形成過程にあたるだけに関心は一層深まります。

 しかも、古代国家の形成過程で大きな「古墳」を造るというような現象は日本列島だけのことではないのです。朝鮮半島でも、中国でも、あるいはその他の地域でも見られます。

 それらにも配慮しながら、この講座では、古墳と古代国家の形成過程との関係について検討したいと思います。