2008年3月22日 (第2848回)

中国の新発展戦略と東北アジア地域経済協力

経済学部 教授 松野 周治

 世界経済における地位を急速に拡大しつつある中国で、2004年末以降、「東北等老工業基地振興戦略」という新たな地域発展戦略が大規模に展開されている。深セン・広東省、上海などと比べてこの間発展が遅れていた中国東北(旧「満洲」)地域の本格的再活性化をめざす同戦略は、経済発展戦略の再構築という中国が直面する重要課題を背景にしたものである。

 しかし、同時に、対象地域の地理的位置や政策目標という点において、同戦略は日本、韓国、北朝鮮、ロシアなど東北アジア各国・地域との経済関係に大きな影響を及ぼす可能性をもっている。米国のサブプライムローン問題が明らかにした現代世界経済の構造的問題点を克服するためには、東アジア、とりわけ東北アジアにおける地域経済協力を強化し、地域内経済循環を拡大、深化させることがきわめて重要である。

 この数年取り組んできたフィールド調査の成果も踏まえながら中国の新たな地域発展戦略の下での東北アジア地域経済協力の可能性と意義を考えたい。