2008年4月5日 (第2849回)

20世紀初頭のロサンゼルスと日本人の移民体験

文学部 教授 米山 裕

 20世紀の初頭にアメリカ西海岸に移民した人たちは、どのような生活をしたのでしょうか。一般的には、差別や低賃金と闘いながら暮らしたこと、太平洋戦争中に強制収容されたことがよく知られています。

 しかし実際には多くの人たちがそれなりの社会的、経済的成功をおさめました。彼らはどのようにして移民先でがんばったのでしょうか。

 今回は、まず20世紀初頭のアメリカ西部が世界経済の中で占めた独特の位置について確認します。アメリカ西部は、ようやく世界経済の一部として組み込まれ、急速に人口が増え、自然を切り開いて農耕地を開拓し、都市を建設しつつありました。そのような労働需要を満たすため、世界の各地から人が集まりました。

 次に、そのような西部経済の中で積極果敢に経済的機会を求めていった日本人移民たちの生活史をご紹介します。さまざまな民族集団が競う中で日本人は得意分野を開発し、そこに集中的に人的資源を投入しました。そうして、戦前の日本人移民社会を形成したのです。当時の写真などを使って具体的に彼らの足跡を辿りたいと思います。