2008年4月12日 (第2850回)

日系社会の鼓動を刻んで -北米和太鼓の歴史と現在-

同志社大学言語文化教育研究センター 准教授 和泉 真澄

 近年、和太鼓は日本だけでなく世界でも大きな人気を呼んでいます。日本の伝統楽器として長い歴史を持つ和太鼓ですが、実は太鼓が音楽として演奏されるようになったのは、第二次大戦後のことです。

 太鼓が音楽として発展していった背景には、西洋音楽とのフュージョン、さらには民族文化に目覚め始めた1960年代の北米の日系人たちと日本の太鼓奏者たちとの、国を越えた交流や、歴史的体験・社会的問題意識の共有がありました。

 この講義では、現地でのフィールドワークをもとに、アメリカやカナダの日系コミュニティにおける太鼓やその他の文化活動の歴史をひもとくことで、戦時中の強制収容をはじめとする、さまざまな人種差別と闘ってきた北米日系コミュニティにとって、民族(民俗)文化がどのような役割を果たしてきたかを明らかにするとともに、特に最近顕著になっている東洋文化や日本のポップカルチャーの北米での人気が、日系人の和太鼓をめぐるコミュニティ活動にどのような変化をもたらしているかを考察します。