2008年4月26日 (第2852回)
日本人移民と社会事業 -アメリカ救世軍日本人部の歴史から-
京都女子大学文学部 教授 坂口 満宏
1920年代、アメリカ西海岸の主な都市に日本人移民のコミュニティができました。移民の増加と定住によって移民社会は活況を呈しましたが、その一方で年老いてゆくパイオニアたちの老後のことや幼い2世たちの健康管理という問題が生じてきました。本講座では、こうした日本人移民社会の課題に対して顕著な働きをみせたアメリカ救世軍日本人部の歴史を紹介したいと思います。
アメリカ救世軍日本人部は、1919年小林政助によってサンフランシスコに創設され、その年のうちにロサンゼルス、フレズノ、ストックトンへと小隊を広げていきました。地方小隊での社会事業は、孤独な移民を訪問したり病人を援助することでしたが、その後、より専門的な療養施設が必要だということになり、サンフランシスコに社会事業館を設けました。そこには無料診療所、養老院、少年少女ホ-ム、婦人ホ-ム、幼稚園も併設されました。とりわけ養老院は在米日本人の歴史においても最も古いもので、サンフランシスコの日本人社会のみならず日本からの援助によって支えられたものでした。
アメリカ救世軍日本人部の歴史をとおして移民社会と福祉の問題について考えてみようと思います。