2008年5月17日 (第2854回)

グローバリゼーションと移民『問題』 -文化葛藤からの回復-

神戸市看護大学 教授 松葉 祥一

 100年前の4月28日、最初のブラジル移民約800人を乗せた笠戸丸が、神戸港から出港しました。その神戸には、ベトナム難民の居住者が多いことをご存じでしょうか。この方々は、戦争時の経験に加えて日本での文化葛藤を経験することによって、心の病を発症することがしばしばあります。こうした文化葛藤に起因する心の病への対処方法に関して、ここ数年ホーチミン市や神戸で行った調査、およびフランスの心理学者トビ・ナタンが提唱する「民族精神医学」という方法をご紹介したいと思います。

 また、最近日本でも移民政策の導入の可能性が議論され始めていますが、移民政策の導入はグローバリゼーションに伴う近代国民国家の理念への大きな影響を与えざるをえない政策であり、政策的議論の前提となる政治哲学的な検討が行われるべき課題のはずです。

 そこで、フランスを参考にしながら、日本の移民政策について政治哲学的な観点から考えてみたいと思います。