2008年5月24日 (第2855回)
死からの回復-イタリアの墓地の事例-
文学部 教授 竹山 博英
「死」は人間が経験しうる暴力の中で、究極的なものといえるだろう。「死」はあらゆるところに普遍的に存在していて、様々な形で出現する。人類は古来「死」を恐れ、それをある一つの枠組みに押し込むことで、「死」の恐怖を克服し、その打撃から「回復」しようと努めてきた。
今回の講演では、イタリアで「死」がどのようにとらえられ、いかに克服されるのか、イタリアの墓地を例にして考察する。
具体的には各地の墓地の構造、個々の墓所の様態、死をめぐる図像表現を検討しながら、イタリア人の死生観を浮き彫りにし、近親者を失った悲しみをイタリア人がどのように克服しようとするのか、映像を通して、具体的に検討する。イタリア人が死を悼むやり方は独特で、日本人とはかなり異なるが、それは死を身近なものとして考える時の手がかりになると思える。