2008年7月26日 (第2863回)

ポスト京都議定書における中国の気候対策

政策科学部 教授 周 瑋生

 低炭素社会は、先進国と途上国が共通に目指すゴールである。しかし、日本はすでに世界最高の省エネ・高効率化を達成しており、CO2を一層削減するにはコストが高く、劇的削減は不可能である。一方、CO2排出大国である中国は、削減ポテンシャルが高く、費用対効果が大きいが自助努力に限界があるため、途上国の持続可能な開発と地球環境保全を同時に実現するために、先進国との互恵的協力が望まれる。しかも経済成長・公害克服と低炭素化のコベネフィットが明確になると、これは低炭素化政策への強力なインセンティブになろう。

 一方、去年12月に開催されたCOP13(=バリ会議)は、2012年以降の「ポスト京都議定書」の新たな国際的枠組みづくりに向け、交渉のプロセスを示すバリ・ロードマップが合意された。しかし、2013年以降の国際協力について今後2年内に合意に達するには、米国の「京都枠組み」への復帰と中国を始めた途上国の参加などを含めた多くの実質的な協議と交渉が必要である。

 本講座では、気候変動問題における国際合意を踏まえ、中国の気候枠組みにおける位置づけと基本課題などの分析を行い、ポスト京都における気候枠組みと中国の気候対策の方向性について解説する。