2009年2月21日 (第2885回)

米国政治の混迷と転換の可能性 ─ アメリカ大統領選挙とオバマ新政権

国際関係学部 教授 安藤 次男

 オバマ大統領の誕生は、アメリカ社会が変わってきたことを示すものですが、その原因は、イラク戦争をめぐるブッシュ大統領の失政だけにあるわけではありません。

  そこで、①アメリカ社会の何が変わったのか、②アメリカはこれからオバマ大統領のもとでどう変わるのか、どう変わりうるのか、という2つの視点から考えてみます。

  ①については、ブッシュ政権の8年間に、国内では「ゲイテッドコミュニティ」に見られる貧富の格差が広がり、福音派などのキリスト教原理主義 に顕著な「何事も善悪で割り切る」思考法による「画一性の要求」が強まって、国民が閉塞感に悩むようになっていたことに注目して、「チェンジ」の訴えが大きな支持を集めた理由を考えます。

  ②については、今回の経済危機へのオバマ政権の「政府介入」のあり方を見極めながら人種的な問題の背後にある貧困問題の解決の可能性を考え、かつ、保守、リベラル、ネオコン(新保守)の3つの潮流の外交理念の違いを比較検討して、今後の外交路線の変化を予測してみます。