2009年2月28日 (第2886回)

世界の金融危機と大不況

国際関係学部 教授 奥田 宏司

 2008年は世界の資本主義の歴史において忘れられない年となった。前年からのサブプライムローン問題がアメリカの主要金融機関の破綻を招き、FRBは金融市場に大量の資金を供給したがアメリカの金融システムの動揺は収まらず、機能停止の危機に追い込まれた。アメリカ政府は政府系金融機関を国有化する一方、民間の金融諸機関には直接、資本を注入することを余儀なくされた。

 危機はアメリカのみならずヨーロッパにも及び、ヨーロッパの諸金融機関の経営悪化と再編が進み、アイスランド、ハンガリー等は「国家破産」状態に陥っていった。それのみか、世界の金融危機は各国の消費の急落を引き起こし、自動車産業、電気産業等の実体経済への深刻な影響をもたらしている。世界的な金融危機に続いて厳しい全般的な不況の時代に入っていくことが予想される。それは、同時にドルの下落、財政悪化などを伴いながら、市場原理主義に基づくアメリカ中心の世界が動揺していく過程でもある。